レビュー『そうか、君はカラマーゾフを読んだのか。』
現在『カラマーゾフの兄弟』の第四巻を読んでいるのですが、気になって手に取ったのが『そうか、君はカラマーゾフを読んだのか。』という本。
『カラマーゾフの兄弟』の翻訳者である亀山郁夫さんが書いている本で、ドフトエフスキーが作品に込めたメッセージを抽出しています。
構成としては、『カラマーゾフの兄弟』から著者が66のメッセージを取り出し、それらに対して見開き2ページをつかい、1ページは抜粋のセリフ、1ページはエッセイというもの。
全体としては、「喜怒哀楽愛悪」という6つのテーマに分かれています。
作者は、「ドストエフスキーは古今東西の作家の中でも、金というテーマに徹底してこだわった作家」と語っており、たしかに作中で起きる事件はお金がらみのものでした。
また、本書から得た収穫のなかで興味深いとおもったのが、ロシアには「愚者崇拝の伝統」があるということ。
愚か者ほど神に近いという考えのようです。
この「愚者崇拝」については、あまり突っ込んで語られていないので、別の本をあたってみたいと思いました。
また、「『カラマーゾフ』の『カラ』とは、ロシア語で『黒』・・・白い雪に閉ざされた長い冬が終わり、雪の下から黒い土の色がのぞきはじめる。ロシアでは、それこそが生命の色だ」(p.45)や、「大審問官の主張は、人間は、自由という重荷を一人で背負い切れるほど強い存在ではない、という一言に尽きる」(p.71)といったことも、カラマーゾフの理解に役立ちました。
本書では、カラマーゾフの物語の背景にある深い意味の読み解きを行っています。
テーマは重量級ですが、かわいらしい登場人物たちヘタウマなイラストがそえられており、とっつきやすさが増しています。
カラマーゾフを読んだ人や読み進めている、これから挑みたいという人にオススメです。