レビュー 『ラムスプリンガ 僕の未来を探す旅』
「アーミッシュ」という人々をごぞんじでしょうか。
アーミッシュは、アメリカのオハイオ、インディアナ、ペンシルベニア、カナダのオンタリオ州にあるコミュニティをもつ、ドイツ系移民の宗教集団。
移住当時の生活様式を保持し、農耕や牧畜によって自給自足生活をしていることで知られており、いまだに馬車にのり、家も自分たちで建てています。
もともとはスイスのチューリッヒで生まれた一派で、宗教的迫害を受けたのちにドイツやフランスに移住したよう。
推定人口は約35万人とされており、東京だと新宿区に住む人数と同じぐらいです。
このアーミッシュたちのことを、ちょっと前に読んだ『スぺクテイター〈48号〉パソコンとヒッピー』のなかで知りました。
かれらは基本的に保守的で、電気を使用しない生活をしているため、テクノロジーにも懐疑的。
しかし、かれらの「少しだけ試してみて、自分たちの生活に取れるかどうか判断する」という、「新しいテクノロジーとの距離感」が、ぼくたちの未来の生活の参考になるのでは、と本のなかでは示唆されていました。
そんなアーミッシュが、実際にはどういう人たちなのかが気になっていたところ、NETFLIXで発見したのが『ラムスプリンガ 僕の未来を探す旅』(原題:Rumspringa)という映画です。
ラムスプリンガとは、アーミッシュの子供が青年になると、アーミッシュをやめるか、再洗礼してアーミッシュのコミュニティで一生を過ごすかを自分で決めるための機会。
ラムスプリンガの期間中は、青年はコミュニティを出て暮らすことを許され、外部の人たちの世界を知ることができます。
アーミッシュのタブーとされている、飲酒、歌、ダンス、車の運転などが、この期間は許されます。
映画のあらすじを簡単に紹介すると、ペンシルバニアに住むアーミッシュの青年・ジェイコブが、アーミッシュの通過儀礼・ラムスプリンガのため、親戚がいるドイツへ飛ぶ。
空港を降りると、荷物を知らない女性に持っていかれてしまい、ジェイコブが街でカツアゲされそうになっていたところを、ドイツ人の青年・アルフに助けられ、彼のアパートで暮らすことになるが…
文化や考えかたの違いで反発しあいながらも、二人は成長し、友情を深めていくヒューマンドラマ。
ラムスプリンガ中は、飲酒、歌、ダンス、車の運転も許されのですが、内気なジェイコブはなかなか禁を破ることができません。
かれは「いままで自分が慣れ親しんだ世界」と、「目の前の世界」のギャップに苦しみますが、都市で色んな人と出会い、経験して、別人のように成長をとげていきます。
これから海外に留学に行く人や、移住する人にも、「カルチャーショックとの向き合いかた」を教えてくれます。
また、アーミッシュであるジェイコブの目標は「良い人間」になることで、アルフの目標は「良いキャリア」と、価値観の対比が描かれており、自分の生き方を見つめなおすきっかけにも。
アーミッシュの文化を知りたい人や、真面目な主人公が変わる映画を観たいという方にオススメです。