エドワード・ゴーリーの『ギャシュリークラムのちびっ子たち』
みなさん、こんにちは。
本日は、なんとも不気味な絵本をご紹介。
エドワード・ゴーリーによる、『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』です。
独特の世界観が魅力的なこの作品は、1966年に発表されて以来、カルト的な人気を誇っています。
ブラックユーモア満載で、「人生、一寸先は闇」だな~と不安になります。
しかし同時に、「人生ってそういうもんだよな」と、「はかない存在である自分」を肯定するような、不思議なきもちになれます。
ストーリー
物語は、AからZまでのアルファベットを順にたどる形で、各アルファベットを頭文字にもつちびっこたちが、「順番に事故や病気で不慮の最期を遂げていく」というもの。
そう、不幸そのものなんです。
たとえば以下のように。
「Aはエイミー かいだんおちた」
「Bはベイジル くまにやられた」
人によってはショッキングに感じるでしょう。
過激な内容なので、幼いお子様に見せるには不向きといえます。
ブラックユーモア
ブラックユーモアと不気味さが特徴のため、万人受けするとは思いません。
しかし、ぼくのようなひねくれた人間には、その独自のスタイルがとても魅力的に映ります。
内容はグロテスクですが、その一方で、子供たちが次々と不運な末路を迎えるさまは、人生の不確かさや、運命といったものを考えさせられます。
また、言葉の選び方や文の構造も分かりやすく、はばひろい年齢層の読者でも楽しめるでしょう。
英語も併記されているので、ちょっとした英語の勉強にもなります。(韻を踏んでおり、リズムカルです。)
ゴーリーの絵の魅力
ゴーリーは、言葉だけでなく挿絵をつうじて物語を紡ぐ名手。
それぞれのページには挿絵がついており、登場人物たちの不気味な一瞬を見事に切り取っています。
そのシンプルかつ不気味な描写が、物語の雰囲気を一層深めています。
読者は、文字と絵が織りなす世界に没入し、独自の感覚に引き込まれることまちがいなし。
ぼく自身、その不気味でユニークな世界観にハマってしまいました。
おわりに
タイトルの「ギャシュリークラム」というのは、作者がつけた架空の苗字で、「クラム」というのは「小さい子」という意味の方言だそうです。
「アルファベット順に事故死するちびっこの話」と聞くと、気持ちがどんよりするかもしれません。
しかし実際に本をひらくと、「人間とは、はかない生き物である」ということや、「人生なにがあるか分からない」といった無常さを噛みしめることができます。
それを受け不安になると同時に、「人生ってそういうもんだよな」と、はかない存在である自分を肯定するような、不思議なきもちになります。
グロテスクな内容ですが、ブラックユーモアが好きな方にはたまらないはず。
シュールな表現がお好きな方にオススメの一冊です。