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悩み多き現代人におくる、心の栄養ドリンク:内田樹さんの言葉が心に響く『「おじさん」的思考』

内田樹さんのエッセイ集『「おじさん」的思考』をよみました。

専門的な知識がなくても、気軽に読める点が魅力的な本です。

今回は、この本から得た3つの興味深い視点について解説します。


多様性が全体を強くする

本書では、生物の多様性が、生態系全体を安定させるうえでいかに重要かということが説明されています。

たとえば、ウマとシマウマは種としては同じものの、見た目も生活スタイルも少し異なります。

この多様性があるからこそ、たとえ一つの種が絶滅しても、生態系全体が崩壊するリスクを減らすことができるのです。

これは、ぼくたちの人間社会にも当てはまる考え方。

個性豊かな人々が集まる社会、または個性豊かな国があることによって、変化に対応しやすく、全体として生き残る可能性が高くなると言えるでしょう。

つまり、自分らしさを追求することは、社会全体のためにも良いことなのです。

フリーターは「失業者」を隠すため?

「フリーターの隠れた社会的機能」という章は、とくに印象的でした。

内田さんは、失業者とは、たんなる「定職に就いていない人」ではなく、「社会の仕組みへの不満を抱えている人」を指す言葉だと定義しています。

具体的には、定職についているけど、自分の能力にみあった収入や社会的地位を得ていない人をさします。

(いままで失業者とは、単に仕事をしていない人だと思っていたので、驚きでした!)

そして、このような人々を「失業者」と呼ぶことを避けるために、「フリーター」という言葉が使われていると指摘しています。

なぜ「失業者」という言葉がタブー視されるのか。

それは、社会の不平等や矛盾に気づいた「失業者」たちが、集団で行動を起こし、社会を大きく変えようとする可能性があるからです。(革命)

そのため、社会を安定させるためには、「失業者」の存在を隠す必要があるというわけです。

ちなみに、主婦や大学生も失業者に含まれます。

その事実を隠すために、家事をしない主婦や、勉強をしない大学生が許される社会となっているのです... (恐怖...)

哲学は心の病気を防ぐ?

本書では、哲学が心の病気を防ぐ効果があるという興味深い主張が展開されています。

そもそも、心が病むのは「自分はなぜ生まれてきたのだろう?」、「宇宙はなぜ存在するのか?」といった、誰にも答えられない「子供の素朴な質問」にとりつかれているから。

ここで役にたつのが哲学で、内田さんいわく哲学とは、答えがうまくでない問いを取り扱うための技法です。

実際に哲学をすると、どうして心が病まわずにいられるかというと、「答えうまく出ない問い」について思考することを「とても知的なことであり、崇高な営みである」と哲学が肯定しているから。

本当に崇高な営みなのか?と考えると、もちろんウソなのですが、狂気に陥らないためには役に立ちます。

なぜ役に立つかというと、人は「あなたは、今すばらしいことをしている!」と肯定されると、たいていの人は興味を失うから。(つまり、その問題から離れることができます。)

反対に、「これは絶対してはいけない!」といわれると、やりたくて仕方がなくなります。

(なので、上記のような「自分はなんで生まれてきたのだろう?」と悩んでいる人に、「そんなことを考えてはいけない!」と言ってはいけないことになります。)

確かに、哲学的な問いを考えることは、ぼくたちを自己中心的な考えから解放し、より広い視点を持つことを助けてくれるかもしれません。

(もちろん、すべての心の病気が哲学で解決できるわけではありません。心の病気を抱えている人は、専門家の助けを借りることが大切です。)

まとめ

「おじさん」的思考』は、社会、哲学、生物学など、様々な視点から現代社会を深く考察したエッセイ集。

内田さんの独特な視点とユーモアあふれる語り口は、読者を飽きさせません。

本書を読むことで、社会に対する新たな気づきを得ることができました。

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