レビュー『書くことが思いつかない人のための文章教室』
文章を書くことは、考えを深め、自分自身を見つめること。
そんな「文章を書く」という行為は、人生のさまざまな場面で必要です。
たとえば受験、就職・転職、昇進試験。
しかし、それぞれが人生を左右する勝負時でもあるにもかかわらず、「文章を鍛える機会」はそうそうありません。
そんな、「文章を鍛える機会」をあたえてくれるのが本書。
アイデアの引き出し方、言葉の探し方、文章構成メモのつくり方といった「いい文章」を書くためのステップを順を追って指南。
大きく分けると「書くことを見つける」やり方と、「文章を書く」やり方で構成されています。
本書の冒頭でさっそく「いい文章」の定義がされているでご紹介。
「いい文章」 = 「独自の内容」 + 「伝わる表現」
「独自の内容」は、自分が経験したことを書くのが一番です。
なぜかというと、ネット検索から集めてきた情報だけでは、みんながみんな情報を発信するようになった現代において付加価値をもたないから。
「自分をとおした体験」の重要性を、しみじみと感じました。
そして、「伝わる表現」に関して印象にのこったのが、「説明をするのではなく、記憶を描写する」ということ。
心情吐露や説明は不要で、「思う」ことよりも、「思い出す」ことによる描写が大切、と著者は力説します。
そのほうが具体的に描写しやすく、書き進めやすいと思いました。
そして、物に感情を託して描くテクニックも参考になりました。
文章は、人や物や自然とのかかわり方をどう描くかであって、たとえばさびしい気持ちならば「さびしい」と書かずに、さびしさを表わす「物」を描写してそれを伝える、というものです。
ベテラン記者で名コラムニストの著者が、ネタが浮かばないときの引き出し方から、共感を呼ぶ描写法まで、すぐ使えるコツをやさしく伝授。
本のベースになっているのは、早稲田大学大学院ジャーナリズムコースでの授業とのこと。
読み終えると「自分にも書ける」ということがわかり、なによりも書くことをたくさん思いつきます。
すでに文章を書きなれた人にはあまり役にたたないかもしれませんが、ぼくを含め文章を書くのが苦手な方におすすめです。