2か月、飲み物だけで生きている②
余儀なくされた流動食生活を心楽しく送るために決めたこと2つ。
①美味しい!と思う流動食だけを食す。
②家族には心をこめてご飯を作る。
前回自分にしか役に立たないレシピについて長々と語ったから、今回は②の、ご飯はせっせと作ってますよーというお話。
食べる人じゃなくて、作る人としてなら、何も損なわれることなく「食事」という素晴らしいイベントに参加できる。
食べる方も気を使わず、作り手の私のためにむしろモリモリ食べてくれるという、優れもののシステム。
●お持ち帰り参鶏湯がインド風カレーに変身!
遠出して山あいにある韓国料理のランチに行った。
お目当ては名物の参鶏湯のスープをすすること。
鶏と薬膳の滋味深い液体を想像してはヨダレが出ていて、ずっと行きたかった。
どこにでも連れてゆく私の相棒、燕三条製スープ漉し器。
保存容器もしっかり持参で、食べられないものをすべて持ち帰りさせてほしい旨をスタッフの方に説明。
快く許可していただき、酵素玄米と参鶏湯のまるっとした鶏肉、嬉しい嬉しいお土産になった。
さて、箸でほろほろと崩れるほど柔らかくなった鶏肉。
あのスープから察するに、味だってそりゃもう沁み沁みなのだろう。
どうしましょう。量は家族分もないしなぁ。
冷蔵庫の野菜室を見ると大量のほうれん草。
鶏肉、薬膳、そしてほうれん草。
カレーにしよう、インド風の!
家にあったクミンシードとガラムマサラとカレー粉を香りがたつまで炒めたら、さっと茹でてミキサーでペーストにしたほうれん草投入。
参鶏湯の鶏肉もほろほろに崩しながら投入。
冷凍庫の隅で発見した、ジャワカレーのルーの残り一かけも隠し味で入れちゃえ。
お水足してとろみを調整して、あっという間に完成。
(一番時間かかったのは、大量のほうれん草の根元をよく洗う作業)
少量舌に乗せて味見したら、う、うま~い!!!
楽しくなってきたので、トマトと玉ねぎ、ニンニク、じゃがいもとサバ缶でサバカレーも作成。
山間から旅してきた「参鶏湯の具」は、我が家でなんちゃってインドカレーセットになりましたとさ(笑)
●ナンプラーは優等生!ガパオライス
インドセットのあとアジア欲が湧いてきて、生協から届いた鶏挽肉を見たら、ガパオライスしか浮かばない。
流動食になる前は、消化の良い鶏挽肉で豆腐入りつくねばかり作っていた。道連れの家族も飽きていたかもしれない。
という我が家の事情も考慮して、本日はタイランチ♪
と思ったところに、遅く起きてきた長女が解凍中の挽肉を見て
「あ~、この挽肉でガパオライス作ろうと思ってたのに」
なんというシンクロ。でも今日は母に作らせてちょうだい!
だいたい常備している豆板醤やオイスターソースなんかの中華調味料。
それにニンニクやネギなんかの中華薬味。
それにナンプラー君を足せばあら不思議「タイ風」になる。
アジアってやっぱりつながっているのね。
私のガパオは調味料と具材を少なめの水分でしっとりと炒めていくだけだけだから超簡単。
季節がきたらベランダで(夫が)パクチーも育てるので、また作ろう。
●歯の矯正用緊急鍋
豆腐入り鶏肉つくねに家族は飽きてるだろうなんて思っていたら、次女が歯の矯正のためやわらかいものしか食べられなくなった。
というわけで、やわらかつくね復活祭。
この日は2食鍋バージョン。
赤はキムチとくたくた野菜たっぷり韓国風スープ。
白はホワイトソースとチーズでシチュー風。
ぐつぐつしたところに、つくねの種をスプーンですくってどんどん落としていく。
口が痛い次女はほぼ無言で、しかし貪り食べ続けていたので美味しかったんだと思う。みんなにも大好評だった。
●「残り物」はソースに♪夜食のオムハヤシ
昔お弁当を作らなくちゃいけない朝、冷蔵庫の中をどう見ても玉ねぎしかない。
じゃあ今日はコンビニでとはならない。
ひとり冷蔵庫にたたずんでくれていた健気な玉ねぎ。
これでなんとかしたくなるタチなのだ。
よし、玉ねぎでかき揚だ!
サクサクのかき揚げに甘辛うまーいタレをかけて、かき揚げ丼の完成。
最高のお弁当ではないか!
こうして私は朝のピンチを英雄的に切り抜けたらしい。
なぜ「らしい。」なのかと言うと、この手のこと日常茶飯事で覚えてなかったが(要するに食材の計画と準備をちゃんとしておこうという反省がゼロ)、どんなに自分がすごいことやってのけたか、親友に相当かき揚げ丼自慢をしていたらしく、彼女が記憶してくれていた。
という性分なので、この日は中途半端に少しだけ残った肉野菜炒めを見て、ムラムラとどうにかしたくなった。
以前だったら、こんなちょびっとの残りもの、その場でパクっと食べてお皿洗っちゃうところだけどそれも無理だし。
私はハヤシやカレーのルーを使うとき、一かけか二かけは使わないで冷凍庫の隅で眠らせておく。
いざというとき素敵な働きをしてくれるのだ。
ほらほら、ちょっとカレーうどん作ったりする時なんかに。
今回もちゃんと冷凍庫の隅にハヤシのルーあり。
まずは残り物の肉野菜炒めをたれごとソースパンへ。
ニンジンジュース作るときの搾りかすも冷凍してあるからそれもいれちゃえ。水と赤ワインでぐつぐつさせたらルーも投入。
遅い時間に帰ってくる家族みんなの夜食。ミニオムハヤシ完成。
残り物おかず+残り物ルーは、オムレツのソースにするのにちょうど良い濃さ、ちょうど良い量だった♪
●品数これくらいで充分な、お弁当
玉ねぎかき揚げ丼弁当の作者としては、お昼にこれくらい品数あればもう贅沢なくらい。必要な日は夫にはお弁当を持って行ってもらう。
●何よりも魚が食べたい
美味しい流動食生活とはいえ、食べ物への切ない想いは日々持ち続けている。
昔々は切ない恋で胸がぎゅーっとなっていたけれど、今は魚と白いご飯が食べたくて、胸がしめつけられ状態になっている。やっぱり日本人だ。
ならば食べたいものを作りましょうということで、
●冷蔵庫の残り物大掃除定食
買い物しないで残り物大掃除の充実感たるや!
相変わらずイレウスの襲撃は突発的にやってくる。
入退院を繰り返しているが、私は退院して自宅に戻ると、荷物を置いてすぐキッチンに立つ。
ハンパな野菜、そろそろ使ったほうがよさそうな食材、賞味期限切れてるけどまだOKなやつ、救済すべき忘れられている冷凍食品。
冷蔵庫チェックしているだけで、カラフルな生活感たっぷりの現実が自分の中に一気に飛び込んでくる。
そしてさっきまで自分を取り囲んでいたカーテンと壁と医療器具の世界は遠のいていく。
刻んだり炒めたり、香りがたってきたり、「わぁ美味しそう」という家族の声を想像しながら盛り付けたり、そんな時間でもうすっかりリセットできる。
さあ明日から出勤だ、と病人から「普通の働く家人」になれる。
家庭料理を作ることは今、私を支える本当に大切な儀式かもしれない。
五感による知覚の割合
親友がもたらしてくれた情報によると
人間の五感による知覚の割合は
視覚83%
聴覚11%
嗅覚3.5%
触覚1.5%
そして味覚が1%
なんだそうな。
「食べられない」生活、
人生の色彩の大部分を失ったような気になるけれど。
欠けたものが1%の知覚なら、というか99%がまだ自分には残されているのなら、元気に生きていかねば!と勇気がむくむく湧く。
そして料理ほど99%の知覚をすべてフル稼働できるものって、ほかに思いつかない。