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雲一つない青空は、本当に雲はないのか?

冬の澄んだ空の下、私はただその青さに心を奪われていた。
雲ひとつない空は、まるで宇宙の深淵が広がっているように、
青色が無限に続いているかのように感じられた。
時間が経つごとに、その青はさらに深く、
静かな空気の中でゆっくりと移ろっていった。

しかし、ふとした瞬間に頭に浮かんだ疑問が、
空の広がりをほんの少しだけ曇らせた。

本当に、雲一つないのだろうか。

何故、その問いが浮かんだのか。
その背景には、ここ最近、私は視力に対して
自信を持てなくなっていたからだった。
確実に目が悪くなってきている。

今まで問題なく見えていたはずの文字が、次第にぼやけて見えるようになり、
街中の案内板すら、近づかなければ読めなくなってしまった。
駅や区役所、スーパーや百貨店の遠くからでも確認できる案内板も、
今では近くでその表記を確認するまでになってしまっていた。

娘の保育園の行事に参加しても、どこにいるのかさっぱりわからない。
スマホのカメラ越しにようやく、目の前の風景を確認できるほどになっていた。

車の運転は、まだ大丈夫だった。
標識の見えにくさへ除けばだが…。
わかっている、その標識が読めないのは危険。
そこで、私は運転時には必ず眼鏡をかけるようにしていた。

私は常々、視力の衰えに悩みながら生活を続いてる。

そんなある日、一通のハガキが届いた。
「免許更新のお知らせ」
私は、眼鏡を持参して臨むことを決意した。
普段から眼鏡は使わず、常に車においているので
わざわざ前日に車に取りに行くことを計画し、更新の日を迎えた。

早めに到着した私は、順番待ちの席に座り待つ。
そしてふと気づく。
眼鏡取りに行ってない!と。
背中にじんわり汗が伝う感覚を感じながら
急いで免許更新の時の視力検査の基準を調べる。

両目で0.7?それで合格なのか自信が持てない。
その焦りを感じながら、案内人が現れ、
スムーズに手続きを進められていった。

次々に進む免許更新。
2人前の人が次の検査へと案内されていく。
その声が耳に入り、次は視力検査だということに気づく。

急いで目を閉じてみる。
これが何の効果があるのかはわからないけれど、とにかく目を休めようと必死に目を閉じる。
そして次は、より目だ。
これをすると少しでも目が良くなる気がして、やる時がある。
そうしているうちに、ようやく視力検査が始まった。

機械にちょうど目が入る様な穴が空いている。
恐る恐るそこに目を合わせる。
目の前に現れたのは、真っ白な画面。
そこに現れる黒い点を指摘するという検査だ。
案内人が「開いている箇所を教えてください」と言うと、
目の前に黒い点が現れた。

おぉ…すげぇ
全くわからん
わからんが目を凝らすと
微かに黒い部分が薄いところがある気がする
恐る恐る薄い部分を答えると、次に違う黒い点を表記させた。

正解かどうかは教えてもらえないのか…
そう思いながら、微かな希望を抱きつつ
恐る恐る薄い部分を見つけては答えを繰り返た。

そしてついに、「合格」をいただき
次は写真撮影と案内された。
そう、ここさえクリアできたら終わったも同然。
そう思いながら残りの案内もスムーズにこなし免許を手にした。

無事に更新ができたことを安堵しながらも、
私の視力がこんな風にクリアに過ごせていいのかと少し不安も感じた。
これからも運転中は必ず眼鏡をかけると心に決めて、警察署を後にした。

ことを空を見ながら思いだした。

私の目の前の冬の澄んだ空は、深い青が広がっていた。
宇宙がそのまま見えそうなほど、青は深く、美しかった。
しかし、私は気づく。
もしかすると、この空には何かが浮かんでいるのかもしれない。
ただ、私の目がその全貌を捉えきれていないだけで。
そんな風に思った冬の日の空だった。

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