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家族に会うと死にたくなる

私はわりと家族を好ましい人間たちだと思っている。
幼少期に特別辛い扱いを受けていたわけではない。
客観的に見て特殊な環境で育ったわけでもなく、所謂普通の家庭だったように思う。

父方の祖母、父、母、私、弟、妹
転勤に伴う引越しや母の出産に伴う母方の祖母宅に一時期預けられたことくらいはあるが、千葉の片田舎にある古めかしいがそこそこの広さがある平屋で育ち、ややケチ寄りな金銭感覚だったように今は思うがそれでもゲームやマンガも与えられ、食事は3食満足、学生時代は部活とインターネット活動に夢中になり親元を巣立っていった。
親元を離れてからも職にありつけないことはなく困窮した時期こそあれど借金などはせず、特別に負い目を感じるようなことは何もなく、ここまで生きてきている。

だけれど、家族に会うと未熟な己のことを思い出し、なんだか過去で立ち止まっているような気がして苦しくなり、今なら思い切ってこの体を海や空に捨てるなりしたくなってしまう。

ひどい言葉を投げかけられることはない。
そりゃ多少は思想の違いを感じることもあるが違う人間の範囲だし、比較的受け止めてくれていると思う。
父は有体に言えば田舎の老害というジャンルの人間だ。
実家に帰れば勝手な言葉や態度、それに私は怒り、父と喧嘩をする。
私は父と人間的な相性は悪いが、それでも愛着がある。
母はしなやかな人間で私は憧れている。
芯があるんだかないんだかわからない態度だが、家庭に依存をしているわけではなく自ら外に出て独自のコミュニティを築き、割と好き勝手生活してリターンの少ない子供たちをたまに、だがその時は愛情深く構ってくれる。

弟とは思い出が少ない。
幼い頃はちょっとおバカな男児、しかし小柄で可愛らしかったが、地元の治安があまり褒められるものでなくその影響が元々の素質か、気づけば実家に寄り付かなくなっていた。
妹とは私が実家を出て人間的に落ち着いてから普通の人間同士として対等にやり取りができるようになったように感じる。
妹は賢く、そして私のせいで抑圧を受けていた。自分で言うのもなんだが私は繊細な人間で、妹もその気質が強かったのだと今は思う。
私は「人間と暮らすストレス」を長女と言う立場を利用し、弟妹を抑圧して実家を巣立った。少なくとも妹はその抑圧を思い切り受けて育ってしまった。
妹は私が実家を出た後、気鬱となり自殺未遂まで踏み切ってしまった。
これは私のせいだけではないと思う。だが、そのような要素を芽生えさせたのは間違いなく私だ。
しかしお互い大人になったいま、彼女は私のことを許しているかいないかは聞いたことがないが、実家にいれば食卓を共に囲い談笑し、お互い巣立った今もふたりで食事に行くことができる関係までとなった。
妹は賢く芯が強く、自分とは違う人間と犬を愛することができる愛情もある人間だ。私は今、そんな妹を尊敬している。

私だって決して褒められた人間ではないが、貶されるべき人間でもない。
貶されるべき人間という表現もよくないけれど、例えば法律を犯していたり、人を搾取していたり、逆に己を擦り減らし苦しんでいる、など。そう言うことは一切ない、所謂人様に特別な迷惑はかけず幸せに生きている。
決して卑下する存在ではないこともわかっている。
立派ではないが、ちゃんと自分を愛しながら生きている。

そんな私だが、家族と話すと己のバランスを崩して一人の帰り道、胸が苦しくなり生活を全て捨ててしまいたくなる。
過去の自分の振る舞いを私が一番許せていないのだと思う。
それを家族に会うと、思い出してしまう。

こんなまともな人たちの中で私は異常な行為をしていたと言う後悔に苛まれる。

でも、私が特別異常だったわけでもないとも思う。
確かに妹の項で綴ったように、私はひどい姉だった。

共に暮らす家族が大嫌いだった。
酷いことなんかされてない。
大切に可愛がられ、おかげで私は32歳にまでスクスクと生きている。
なにがそんなに気に入らなかったのか、いまだにわからない。
共にいるだけで癪に触り、罵詈雑言を放ち、妹や弟には覚えたての深みのない「死ね」を浴びせ、一度だけ包丁を向けたこともある。
一度じゃないかもしれない。なにせいじめた側はいじめたことなど覚えちゃいないのだから。

怖すぎる、私。

何が当時の私をそこまで突き動かしたのか、わからない。
人と共に暮らすと言うことが根本的によくなかったのかもしれない。
でも子供は一人では生きていけない。
そんな私、病みそうな環境の弟と妹まで辛抱強く育て、今も父母は父母として存在してくれている。

私は家族と会うと羞恥心と申し訳なさと劣等感で死にたくなる。
でも、家族が悲しむから死なない。
家族に私はまあまあちゃんと愛されているのだ。
幼い頃の話、もちろん人格形成に影響は与えただろうし父母も手を焼いただろう。
今だって許してないかもしれない。愛してくれてないかもしれない、
でもいま、普通の一人の人間として仲良くしてくれる。
何が気に入らないんだ、私。
友達がこんなこと言っていたら気にしすぎだろと笑えるし、多分妹に言ってもそう言うのだろう。ちくちく責められたとて、私は仕方ないと思える。謝って許されるのか許されないかはわからたいが、もうそんな時空で彼女は生きていないのだ。
私ばかりが捉えられている。

私は今にでも電車に飛び込みたいが、家族が悲しむからやらない。ついでに言うと友達も悲しむと思うから。

夏すぎる。

し、死にてえ〜

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