180度発想を転換したことで見えてきた?キャンパスを飛び出した、明星大学のオープンキャンパスの可能性
びっくりするほど暑いです。本州はまだ梅雨明けしていませんが、気分はすでに夏。そして大学の夏といえば、そう、オープンキャンパス!大学のプレスリリースを見ていると、オープンキャンパス関連のものがよく目に留まるようになってきています。今回、取り上げるのも、そんなオープンキャンパスの開催を告げるもので、発想が通常のオーキャンと真逆ですごく示唆深く感じました。
結婚式場で開催される異色のオープンキャンパス
では、どの大学のどんな取り組みなのかいうと、明星大学の「ブライダル『体感型』オープンキャンパス」という取り組みになります。ブライダル「体感型」か、あぁあれね、とほとんどの人はなりませんよね。私もなりません。詳しく見てみると、会場がなんと結婚式場。プログラムは、式場の見学やウェディングプランナーの仕事体験、さらに“オリジナルウェディングの先駆者”として知られる同大学客員教授による講演会などが開催されるとのこと。
オープンキャンパスなのにキャンパスを飛び出しているというのは、なかなかもってファンキーです。しかもプログラムも、通常のオーキャンとは大きく異なっています。でもこの取り組み、思いつきで試しに1回やってみた、というものではないんですね。今年度で7回目となり、意義や効果が認められ定番化しています。ちなみに昨年度の開催の様子をまとめた動画がありましたので、こちらも紹介しておきます。
ターゲットを絞るからこそできること
オープンキャンパスの開催場所というと、キャンパスだと相場が決まっています。キャンパスを会場にするのはなぜかというと、ここで実施するのが最も受験生に魅力を伝えられるから、というのが理由でしょう。でも、明星大学の「体感型」オーキャンは、あえて開催場所を結婚式場にしています。なぜかというと、結婚式場の方が魅力を伝えられると踏んだからです(そのまんまですが…)。ではなぜ、そうなりえたのか。これは、そう感じるだろう人だけに大胆に絞って募集をかけたからです。
「体感型」オーキャンの募集対象は、「経営学部 観光・ブライダルコースに興味のある高校3年生」です。学部単位でさえなく、コース単位にまで限定して参加者を募集しているんですね。しかも「高校生」ではなく「高校3年生」。つまり、募集段階からブライダル(もしくは観光)を専門的に学ぼうと具体的に考えている人しか参加できないようにしているわけです。
ここまで具体的にターゲットを絞り、ニーズもわかるようにすれば、どこで何をすれば心に響くのかはだいぶ想定しやすくなります。少なくとも、通常のスタイルでやるより、もっと効果的なやり方がないかを関係者で模索できる状況になります。孫氏の兵法でもないのですが、相手を知り、こちらが一番有利に戦える場で勝負できれば、自ずと勝率も上がるはずです。さらにいうと、だいたいの受験生は複数のオーキャンに参加して志望校を検討します。他大学との差別化をはかる上でも、このアプローチは上策だと感じました。
一方、こういう戦略をとると、応募してくる受験生の数が減ってしまうのがネックになりそうです。「体感型」オーキャンの場合はどうなのかと調べてみたら、募集人数が50名でした。明星大学の経営学部の定員が200名(2024年4月1日時点)で、6コース制をとっているため、1コースあたりの人数は35名程度だと考えられます。50名が参加してくれたら、企画として十分成立するのでしょう。ターゲットを絞り込むことで、必要な人数も減っていくので、そういう意味ではこれはこれでバランスがとれていくのかな、という気がしました。
オープンキャンパスというと、志望校選びのキーイベントになるので、とにかくできるだけ多くの高校生に来てほしいと、当たり前のように思ってしまいます。でも発想を逆転させて、意識的にターゲットを絞り込めば、求めているものをもっと明確に理解できるようになるし、提供できるようになる。つまり、オーキャンの質を大幅に上げることができます。今後、少子化がどんどん進むことを考えると、万人受けを狙うより、個別最適化した企画で丁寧に受験生を囲い込むほうが、結果的に効率が上がるのかもしれません。新たなアプローチとして、真剣に考えてみてもいいのではないでしょうか。
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