続 叶えられた祈り
大きな手に頭を撫でてもらう夢を、年に何度か見た。
夢の中の彼は、あの頃と変わらない姿と温もりでわたしを包んで、もう思い出せなくなったと思っていたのに、唐突に記憶がよみがえる事が不思議だった。たったそれだけの夢の中、きらめく光の中でその幸福を味わって、目が覚めてもその余韻がしばらく残った。
わたしの好きだった人が、すてきな女の子と結婚して、幸せに暮らしている姿を想像して、どうかそんな風に幸せでいる事を願った。それくらい大切に想っていたし、彼が幸せであるなら、わたしと結ばれない事なんて全然良かった、心から。
ただ、少しだけでもいいから、彼の心に残っていたら嬉しい。わたしの見るおぼろげな夢みたいに。
とは言え、あれから既に10年が経っているから、ほとんど思い出す事もないだろうと思っていた。
あの日までは。
わたしにとっての“あのひと”が、10年経ってからわたしを探して逢いに来てくれた日のことは一生忘れない。2020年のことだった。
それ以前の思い出さえ既に一生忘れられないものばかりだったのに、それを上回ってしまうくらい幸福な一日だった。こんな幸福なことが起きるなんて、わたしの寿命はもう尽きてしまうんだろうな、と本気で思っていた。