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アキ・カウリスマキ『街のあかり』について

 昨日に続いてカウリスマキの映画を観る。妻が子どもらを連れて実家に行ってくれているので、のんびりできているのだ。

 カウリスマキの映画はやはり淡々としている。劇的なドラマもなく、過剰な演出もなく進行する。使われている音楽も渋かったり絶妙にダサかったりで、ほんまにぶれへんなと思う。

 昨日観た『過去のない男』と同じく、主人公は貧しい労働者だ。しかし、『過去のない男』では主人公が優しい人々に出会っていくのに対し、こちらの主人公の境遇は結構過酷だ。マフィアの美人局に引っかかり、仕事を首になったり豚箱にぶち込まれたり、マフィアに暴行を受けたりと散々な目に遭う。彼に好意をもつのは、ソーセージ屋の店員ただ1人だ。

 と、本当に散々な目に遭ってばかりで、主人公も普通に身近にこんな人いたらイケメンでモテるやろと思うんやけどなんか陰気臭く、映画の終盤ずっとまで暗い。カウリスマキ独特の淡々とした進行でそこまで深刻な暗さはないんだけど、これって演出によってはいくらでもどんよりさせられるんじゃないかってくらい、起こる出来事は陰惨である。しかし、最後の最後には希望があった。この希望が今後どうなっていくか、エンドロールを見ながら想像するのもいいかもしんない。

 って、もしかしたら人によっては全然感情移入できんというか、よく分からん映画やと思うんやけど、俺が多少なりともこの映画を理解できるのは、俺自身が20代前半を結構な貧困の中で過ごしたことで共感できる部分があるからかもしれない。俺もネットカフェとかテレアポとか、低賃金のバイトで食い凌いでいた時期がある。ネカフェとか不当解雇されたし。カウリスマキ自身も、郵便配達とか皿洗いとかの労働をしていたことがあるらしい。色々経験しとくもんやなと思った。

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