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町田康『くっすん大黒』について

 大学生のころ、町田康の小説にはまっていくつか読んでいたことがある。どれも、実際に笑ってしまうという意味で面白く、阪急電車の中で読んでいた時に笑いが止まらなくなり、恥ずかしい思いをしたこともある。

 今回、再読しようと思ったのは、トリプルファイヤーの吉田氏がインタビューやYouTubeで町田康に言及しており、「そういや大学のころ読んでて面白かったな」と思い出したからだ。というわけで、自分が最初に読んだ町田康の作品である『くっすん大黒』を書い直し、再読した。やはり面白かった。

 内容を要約すれば、仕事を辞めて妻にも逃げられた酒飲みのろくでなしが、家にある大黒の置物を捨てに行ったり、金のために古着屋でバイトしたり、リポーター的な仕事をしてみたりという、それだけの話なのだが、もうめちゃくちゃ面白い。なんでこんなに面白いのかと考えた時に、まず文体の面白さがあると思った。主人公が語るように文章が進んでいくのだが、なんかものすごいテンポ感と独特の語り口で、面白すぎる。冒頭からいきなりWヤングとか出てくる。何が面白いのか具体的に書けないんだけど、とにかく面白い。

 あと、登場人物のズレっぷりが面白い。いわゆる社会生活不適合者的な人物がいっぱい出てくるんだけど、読んでて癒されるというか、肩の力が抜ける。なんだか、俺もこれくらい適当でいいかと思っちゃう。あと思うのは、これに関してはジム・ジャームッシュの映画にも通ずるものがあると思う。なんか知らんけどほっこりする。

 というわけで、他にも『屈辱ポンチ』とか『きれぎれ』とか『告白』とか買ったので、楽しく読んでいこうと思う。

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