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7人に読んでほしい名著【ナム・ジン・ユンギ篇】

好きな物語とか感動した本とか、そういった愛しいものに出会うたびに、ふと思い浮かべる人たちができました。

この透き通ったお話は、あの人に聞かせたい。答えが出ない問答は、あの人の意見が聞きたい。そんな自分勝手な気持ちの積み重ねの結果、このnoteを書いています。

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彼らの嗜好性も読んできた本の経歴も全く無視して、わたしが7人にぜひ読んでほしいと思う本たち。もしこのnoteを読んでくださる彼らのペンの皆さんがいらっしゃれば、そしてもしも紹介した本に興味を持ってくだされば、ふと寂しくなる冬の夜にでも、これらの本を開いてみていただけると嬉しいな、と思います。

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キム・ナムジュンさんに捧げる本

『未来をつくる言葉-わかりあえなさをつなぐために-/ドミニク・チェン』
https://www.amazon.co.jp/dp/4103531118

この本は、わたしが2021年に読んだ最も素晴らしい本のうちの1冊です。著者は、遺伝学的にはアジア諸国の混血でありながら、フランス国籍を持ち東京で育った人。自身の多国籍な経歴を端緒に、「言葉を知ることは新しい領土を自分の中に持つこと」という概念をわかりやすく教えてくれます。一見すると言語学のお話なのですが、著者自身は科学の徒。途中からは機械言語やアート、文化人類学といった非言語分野にまで話が展開し、お互いの世界をわかり合うためのヒントを示唆してくれます。

ナムさんは、「言語を駆使して自分の領土を飛び越えていく」という体感を持っている人なんじゃないかなと思います。言語だけでなく、アートや読書といった自分だけの世界を持っている人。ナムさんの世界のすべては、当然誰にも理解しようがありません。それはある意味孤独であり、一方で自由でもある証拠。このお互いの環世界を尊重しあって、お互いの「わからない」をつなぐためにはどうすればいいんだろう。そんなことを考えてしまう本です。ナムさんはきっと、共感したり納得したりしながら読んでくれると思うんだ。

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キム・ソクジンさんに捧げる本

『屋根裏の散歩者/江戸川乱歩』
https://www.amazon.co.jp/dp/4394301505
『マイナス・ゼロ/広瀬正』
https://www.amazon.co.jp/dp/4087463249

ごめんなさい、推しだから2冊捧げるとかそういうことじゃないんです。いやそういうことなのかな?まぁいいや。ジンくんは、「定められたルールを活用しながら楽しむ」というゲーム感覚に優れた人。この感覚って、ミステリーやSFにぴったりだと思うんですよね。ミステリーなら、アリバイという物語上のルールを掻い潜ったり生かしたりしながら真実を突き止めます。そしてSFなら、「時間」の概念や「進化」の概念をルールとして、物語を進めていく面白さがありますよね。

ジンくんにおすすめしたい2冊は、それぞれ本格派のミステリーとSFでありながら、とても情緒的な側面を持っています。例えば『屋根裏の散歩者』であれば、犯人の目線でお話が展開します。読者は犯人になりきって、殺意を抱いたり衝動的になったり、追い詰められて背筋が寒くなったりする体験を愉しめるんです。
そして『マイナス・ゼロ』は、タイムトラベル系のSF。こういう系統の物語って“壮大な風呂敷を広げて最後は大団円”というストーリーが多い中、この作品は「すれ違ったまま永遠に追いつけない切なさ」を強く描いてるんですよね。花様年華かよ。わたしはめちゃめちゃ泣きました。ジンくんに読んでもらいたい…!

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ミン・ユンギさんに捧げる本

『大聖堂/レイモンド・カーヴァー』
https://www.amazon.co.jp/dp/4124035020
『告白/町田康』
https://www.amazon.co.jp/dp/4122049695

ユンギさんには感想を教えてほしい本がたくさんありまして、泣きながら2冊に絞りました。なんでだろう。答えのでない人生の不条理さとか、理由もわからないのに感動するたった1行の文章に出会うと、ユンギさんに質問したくなるんですよね。どう思いますか?って。

レイモンド・カーヴァーは、中学生の時に兄に手渡された本。当時は、どうしてこんなに救いのないお話を読ませるんだろうと疑問でした。でも、歳を重ねてから読むと痺れますね。めちゃくちゃいいですね。どうしようもない毎日への“疲れ”って、元気な言葉だけでは癒せない時があるんだな、同じ様に疲れた物語を読むことで寄り添われたような気持ちになることがあるんだな。そんなことを教えてくれた、大人の味がする短編集でした。
町田康の『告白』は、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフにしています。大量殺人事件の話なのに、“理解って”しまうんですよ。暗く悲しい人生なのに、ときに笑わせ、ときに泣かせてくる町田康の力、本当に物凄いと思います。わたしの棺に入れて欲しい1冊です。(絶対にTPOを間違えていますが…)

ということで、早くも2000文字以上書いてしまいましたので、残りメンバーへ捧げる本は次回noteにまわしたいと思います。次回は勇気いっぱいの冒険譚や、心が暖かくなるクリスマス本がご紹介できそうです。

ここまでお読みくださった気長なあなた、本当にどうもありがとう。

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