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Episode 300 ズームアウトが出来ません。

数日前のTwitterでのツイートで見かけた話です。
ASD者の言葉の厳密性は、しばしば言い争いの原因になる…と言った内容でした。

A: この店の「から揚げ」は美味しいよね
B: うん、この店の「揚げ物」は美味しいね
A: いや、「揚げ物」ではなくて「から揚げ」だよ
B: 私の言う「揚げ物」は君の「から揚げ」と同じものを指しているよ

正確な引用ではないのですが、こんな感じにASD者の言葉の定義の狭さが会話上で問題になることがあるよ…という話だったと思います。
これ、ASD当事者の私としては、数々の「思い当たる節」がありまして…。

ASDのAさんは、「から揚げ」と「揚げ物」を分けて考えているワケですよね。
受け答えをしている定型と思われるBさんは、「揚げ物」という「から揚げ」を含むカテゴリを指して、お店の「から揚げ」を含む評判の高さを言っているのだと思います。
普通は、「揚げ物」の中に「から揚げ」も含まれることを理解して話しが進んでいくのでしょう…ここで「から揚げ」と「揚げ物」が違うという議論には発展することは先ずない。

定型の方々からすれば、なぜこんなにASD者は言葉を厳密に使い分けるのか不思議に思うのだろうと思います。
私は、ここ数日で話題にしてきた「できる」の感覚と、言葉の厳密性の問題の根が同じなのではないかと感じています。

基準がひとつしかないということ。
その先には、言葉の働きを限定する修飾語が自在に操れないことがあると思います。

以前、ASD者の過集中傾向について、「カメラのズーム機能が故障している」というたとえ話で説明したことがあります。
つまり、「揚げ物」という広角から「から揚げ」という食べ物にズームインしたまま、ズームアウトできない…「から揚げ」を望遠レンズで覗いたままで、「揚げ物」というカテゴリに含まれるという事実にピントを戻しきれない。

もしかしたら、ASD者の言葉の感覚は、動詞に限らず、名詞についても基準がひとつしかないのではないかと思います。
かるたに絵が描いてあるじゃないですか。
読み手が「から揚げ」と言ったら「から揚げ」の絵を探します。
読み手が「揚げ物」といって「から揚げ」の絵を探せるか?
もしかしたら、一生懸命に「フライ」を探しているのではないか?

もちろん、から揚げが揚げ物に含まれていると、私も知っています。
でも、気付くとできるは別の話なのです。
脳内ズームの動きの悪さがASDの特徴とした場合、から揚げが揚げ物に含まれると知っていて、スッとズームアウトして単品からカテゴリにピントを変えて話題を継続することが出来なくなるような気がします。
今までにそのようなやり取りを何回もしてきたような気がします。

それもこれも、そもそもはコミュニケーション不足の放置が原因のような気がします。
経験が不足すると言うことが、こういう問題を生むのだろうと私は思うのです。

旧ブログ アーカイブ 2019/7/11

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