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勝利と同じくらい定石・伝統が重視される日本野球におけるバントの多用

日本野球におけるバントの多用は、かねてより多くの野球ファンから指摘されてきた問題です。わざわざアウトを増やし、大量得点の可能性を狭めてしまうバント戦略が、なぜこれほどまでに繰り返されるのか。私は、この問題の根底には、日本社会全体に見られるある特徴が深く関わっていると考えています。
以前からお話しているように、日本社会は、ある種の「セオリー」を重んじる傾向が強いように思います。囲碁や将棋の世界で「定石」と呼ばれるものが存在するように、日本野球にも「定石」と呼ばれるような、あるべき姿が確立されているように感じます。そして、この「定石」から外れる行動は、よほどの才能を持つ者でなければ、失敗に繋がりやすく、周囲からの非難を招きがちです。
これは、日本人が伝統を重んじる国民性とも深く結びついています。先人たちが築き上げてきた伝統や慣習は、簡単には変えるべきではないという考え方が根強く存在し、この伝統を破る行為は、いわば「悪事」と見なされることすらあるのです。
バントが必ずしも最善の策ではないということが、より多くの人に理解されるようになれば良いのですが、残念ながら、日本の野球界、ひいては日本社会全体が、このような「定石」を重視する風土から簡単には抜け出せない状況にあるように思います。
企業における上司と部下の関係や、学校における教師と生徒の関係など、日本の社会構造全体が、ある種の「上下関係」を前提としたものになっていると言えるでしょう。野球界においても、監督が選手に指示を出し、選手はその指示に従うという上下関係が厳然と存在しています。このような状況下では、若手選手がベテラン選手や監督に意見を述べたり、新しい戦術を提案したりすることは、非常に難しいことなのです。

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