鉄壁の城塞ここにあり/将棋
鉄壁の”穴熊”
堅牢な囲い
”穴熊”という囲い方は、数ある将棋の囲いのなかでも、
最強クラスの堅さをもっている。
”穴熊”を崩すにはそれ相応の手数がかかり、
また、そう易々とは寄せられない形である。
組みあがるのに長手数がかかってしまうものの、
一度組みあげることができれば、
まさに鉄壁といえる堅さとなるのだ。
”穴熊”の手順
”穴熊”は以下の手順で組んでいくのが標準的である。
便宜上、先手番の棋譜のみを示す。
1.☗7六歩
2.☗4八銀
3.☗6八玉
4.☗7八玉
5.☗5六歩
6.☗5七銀
7.☗7七角
8.☗8八玉
9.☗9八香
10.☗9九玉
11.☗8八銀
12.☗6六銀
13.☗6八角
14.☗5九金右
15.☗7九金
16.☗6九金右
17.☗7八金右
以上の17手で”穴熊”は完成である。
完成形は<第1図>の右側のようになる。
玉将が9九のマスにおり、
まさに巣穴に深く籠った熊を彷彿とさせる。
前方は6六の銀将を筆頭に、2枚の歩兵で守られており、
たとえ侵入できたとしても、
斜めのラインが利いた角行や固められた金銀3枚に阻まれる。
”穴熊”の強み
<第1図>の配置より抜粋した<第2図>の6枚をみてみると、
”穴熊”の強みがわかる。
この6枚が並んでいる限り、
相手はどの種類の駒を持っていても、
1手で王手をかけることは不可能である。
駒を飛び越えて攻撃できる桂馬ですら、
この<第2図>の配置では、王手をかけることはできない。
”穴熊”の特殊性が十分に発揮されている特徴の一つである。
完璧に見える”穴熊”も・・・?
長手数がかかること以外は、
これといった欠点がないようにもみえる”穴熊”だが、
その特殊さがゆえに玉将の逃げ道がないという弱点を抱えている。
<第3図>のように、
密着しながら攻撃をされると、玉将が脱出する隙がなく、
受け方が制限されてしまう。
相手の”と金”と金将が迫っており、
金将の攻撃範囲の広さと玉将の逃げるスペースの無さから、
簡単に詰んでしまう。
玉将の周りをはがされてしまえば、
味方の駒自身が大将を追い詰めてしまう結果となるのだ。
その他の”囲い”
何度も繰り返すように、
”囲い”の種類は多数存在し、
また、前回の記事でみたように変化することもある。
近年でも”囲い”の研究は進められており、
将棋ソフトやAIの発展により、見出されたものもある。
次回以降の記事でみていく”居飛車”や”振り飛車”といった、
戦法によっても”囲い”の種類は左右される。
玉将の守備を固めることは、”詰み”から遠ざけることであり、
そのための”囲い”には将棋のエッセンスを感じることができる。
まずは”金矢倉” ”美濃囲い” ”穴熊”あたりを基本として、
ゆくゆくは様々な”囲い”に触れていきたい。
さいごに
今回で”囲い”については、一区切りとする。
実践でどのように運用できるかは難題であるが、
私なりにじっくり時間をかけて基礎固めをしていきたい。
これで将棋の五原則と呼ばれている、
駒を「取る」、相手を「攻める」、駒が「成る」、
玉将を「寄せて」「詰める」、自分の玉将を「囲う」を紹介し終えた。
戦法を学べば、いよいよ将棋完全初心者の私も、
対局という大海原へと旅立つことができそうである。
理論と実践のサイクルをうまく回しながら、
私なりの学び方で将棋を楽しんでゆきたい。
―B.―