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「囲い」の形は千変万化/将棋


”美濃囲い”の進化形

”美濃囲い”を変化させる

将棋には、「囲う」という概念があり、
平たく言うならば、
これは玉将の”守備を固める”ということである。

「囲い」は100以上ものパターンが存在しており、
そのなかでも”振り飛車”の戦法を採った際に、
よく使われる典型的な例が”美濃囲い”である。

”美濃囲い”については、
以下の記事に詳しく書いている。

今回の記事では、
”美濃囲い”を変化させる様々なバリエーションについてみていく。

片美濃囲い

左右のバランスを重視する

<第1図>が”片美濃囲い”と呼ばれる囲い方である。

<第1図>

”美濃囲い”に比べて、
玉将の周りの金将が一枚少なく、
その代わりに左側に1枚金将を配置している形である。

”美濃囲い”よりも左右のバランスがとれており、
大駒の侵入を防ぎやすいといったメリットがある。

しかし、単純明快な話で、
”片美濃囲い”では、玉将の守りが金将一枚分少ないことから、
”美濃囲い”と比べると守備力は劣る。

<第2図>のように、
竜や角行を打たれてしまうと、
あっけなく脆く”囲い”が崩壊してしまう。

<第2図>

<第2図>のとき、
金将で相手の銀将を取った隙に、
3九のマスへ角行を打ち込まれると、
”囲い”の陣形は一気に崩壊する。

このように、
”片美濃囲い”はバランスのとれた配置であると同時に、
攻め込まれやすい脆弱性をはらんでいる。

高美濃囲い

前方に強い”美濃囲い”

前回の記事で、”美濃囲い”は前方からの攻撃に弱いと述べた。
しかし、”美濃囲い”からさらに数手進めて、
”高美濃囲い”という囲い方にすることで、
前方からの圧力を緩和できることがある。

手順は以下の通りである。

<美濃囲い>の配置から
1.☗4六歩
2.☗3六歩
3.☗4七金
4.☗5六歩
5.☗3七桂

このように続けると”高美濃囲い”の配置となる。
実際の”高美濃囲い”の形が<第3図>である。

<第3図>

この配置では、金将と銀将の連携がかみ合っており、
また、歩兵が前方に出ていることが特徴である。

さらに、一番のポイントは、3七の桂馬である。
前方ににらみを利かせており、
場合によっては攻め駒に転じることも可能である。

”美濃囲い”に比べて前方からの攻めに強くなっているのは、
明らかである。

一方で、側面からの攻撃に対しては、
どうしても弱くならざるを得ない。

特に4九の金将が狙われやすく、
<第4図>のように、垂れ歩で攻められると苦しい。

<第4図>

また、角行のラインがもろに4九の金将に当たってしまうこともある。

<第5図>

このため、敢えて桂馬を跳ねずに、
2九のマスにとどめておくという戦術もある。

銀冠囲い

”高美濃囲い”をさらに強くする

先述の”高美濃囲い”からさらに数手進めて、
より前方の防御を厚くした配置が”銀冠囲い”である。

手順は以下の通りである。

<高美濃囲い>の配置から
1.☗2六歩
2.☗2七銀
3.☗3八金

3手進めることで、”銀冠囲い”が成立する。
<第6図>の配置である。

<第6図>

右側の形が”銀冠囲い”となる。
前方への防御が非常に堅いことが最大のメリットといえる。

仮に<第7図>のように歩兵がすべていなくなったとしても、
玉将の上の銀将が守りをカバーしてくれている。
このため、王手がかかりにくい。

<第7図>

また、玉将の上の銀将の守りはこれだけではない。
例えば、<第8図>のように香車がつり出され、
☖2四桂と打たれたとしても、
銀将が利いているためすぐには崩壊しない。

<第8図>

このとき、☗同銀ですぐに取り返せるため、
大きな問題にはならないのが特徴である。

前方からの攻撃にめっきり強い”銀冠囲い”であるが、
弱点も存在する。

それは、後方からの攻めである。

<第9図>のように、
下段から攻められてしまうと、
玉将が”寄って”しまうことがある。

<第9図>

下段からの攻撃が非常に厳しいことに加えて、
組み上げるのに手数がかかるという点も弱点のひとつである。

”美濃囲い”→”高美濃囲い”→”銀冠囲い”と発展させるまで、
数十手が必要となり、奇襲をかけられると守りが手薄になってしまう。

さいごに

”美濃囲い”は非常にオーソドックスな”囲い”のひとつであるが、
さまざまなバリエーションに変化する可能性を秘めている。
戦況に応じて、適切な囲い方を選択できるかが一つの焦点となる。

”囲い”の形は千変万化であり、正解はない。
”美濃囲い”一つとってもそこには深淵な戦略が潜んでいるのだ。

              ―B.―

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