あやとり家族14
お兄ちゃんのお古を着るとお母さんが喜ぶから。ももちゃんも新しい赤い洋服が着たかった。
双子だから必ず2着買っていたが、成長していくにつれももちゃんの方が大きくなっていった。だからすずちゃんとはサイズが10〜20違ってきていた。
年子のお兄ちゃんがいて、お兄ちゃんのお古を着てくれないかとお母さんに頼まれる。そうするとすずちゃんの分だけ買えばお金がかからないからと。
お兄ちゃんの洋服は、男の子用だから青とか緑とか、デザインももちろん男の子っぽい。「いいよ、ももちゃん着るよ」ってお兄ちゃんのお古を着ることになった。
それで、お母さんが喜ぶなら、お金のことでお父さんと喧嘩にならないならって思っていた。
すずちゃんが新しい服をきているのが羨ましかった。ピンクとか赤とかでかわいいし。あまりにも可哀想に思ったのか時々、ばーちゃんが2人にって洋服を買ってくれたがやっぱり青とかそっちの色ばかり。
同じ色でいいのに、どうして色違いにするんだろう大人って。
本人たちの勝手な思い込みだと思うんだ。平等に育てたいなら同じ色でいいじゃない。この色違いが喧嘩の原因になっていることに気づかない。
ももちゃんは薄汚れたお兄ちゃんのお古も文句も言わず着続けた。すずちゃんとの体格の差は埋まらなかったからずっとそうしてきた。
自転車もそう。お兄ちゃんが大きくなって新しいのを買うからそのお古はももちゃんで、新しいのはすずちゃん。これが当たり前になっていた。
じーちゃんは物静かで口数が少ない温厚な人。
でも周りをよく見ている。
そんなじーちゃんがある日サプライズを起こした。
「ももちゃん、こっちおいで」じーちゃんから声をかけてくることなんて滅多にないから驚いて外に出る。
そこにあったのは自転車だった。しかも中古でボロボロのやつ。
じーちゃんは私だけのためにこの自転車をわざわざ買ってきてくれた。正直新しいのがよかった。だってその自転車は前輪のところにオブジェのようにバットとボールが乗っかっていて、一目で男の子用の自転車とわかる。
色もエンジ色と茶色でサビサビ。
そこからじーちゃんは綺麗に掃除してくれてピカピカに仕上げてくれた。
またお古か、また男の子用か。と最初は思ったが、じーちゃんがももちゃんにって私専用のものを買ってきてくれたことがとても嬉しかった。
お母さんはお古でどうにかすまそう、ももちゃんなら言うこと聞いてくれるからって私に我慢させることしかしなかったから。
じーちゃんは見ていたんだ。お古ばかりで我慢しているももちゃんを。
だから助けてくれたんだと思う。
この自転車は私の宝物、ずっと大切に乗っていた。壊れたらじーちゃんが直しくれる。ももちゃんだけの唯一のものだった。