あやとり家族39〜姉のために留学させられるvol1〜
また私が使われる
高校卒業時、双子の姉は海外留学したいと言い出した
父は大賛成だったが、女1人で行かせることに不安があった
父から見て姉のすずちゃんは”女”
当時の私は特にやりたいこともなく、就職活動も始めたのが遅かった
そして、学校と就職先との連絡ミスがあり就職することができなかった
だから卒業後は、アルバイト先とパチンコ屋を行ったり来たり
そんな生活を3ヶ月ほどしていた
ある朝、父に叩き起こされ顔も洗わないまま連れて行かれた写真館
顔写真を撮られた
何だかわからない書類に、名前を英語で書くようにと言われ寝ぼけながらサインする
夜遊びも散々していたから、いつも寝ぼけた状態
この間、父は着々と準備を始めていた
私をすずちゃんと一緒に海外へ行かせようとしていた
このことを聞かされたのは海外へ行く1週間ほど前のこと
「すずちゃんが留学したいと言っている。1人で行かせるのは心配」
「ももちゃんも何もしていないなら一緒に行ってきたらどうか」
父は、私にも海外を見た方が良いと考えたのかもしれない
だけどADHD,ASDと気づいていない当時の私には
本当の真意など入ってこない
言われた言葉を鵜呑みに感じるしかなかった
”またすずちゃんのためか”
父も母も私のことより、すずちゃんのことばかり
自分が利用されること、だけどそれで父の不安がなくなる
自分のことより人のこと、心のアンテナが外に向いている私には
父を安心させるということが1番良いことと思い込んだ
自らを肯定させる要因なんてない
友達と遊びたいし、海外なんて行きたくなかった
父はとても人の心を掴むことが上手だった
「何もしていないなら、行ってみたら世界が変わるかもしれない。良い経験にもなると思う」
私を思っているセリフに変わる
すずちゃん1人で行かせるのが不安っていう理由なのに
私にもメリットがあるような言い回しに変える
結局、本当の理由がわかっていても父を悲しませることはしたくなかった
しょうがなく行くことになった
全く興味のない私は行く日さえ、覚えていなかった
1週間しか時間がなかったから余計だ
渡航する前日夜遅く帰宅した私に母が「準備をしなさい」
とスーツケースを持ってきた
中に入れたのは
ティッシュペーパー5箱
ナプキン
大量の文房具、その他諸々
朝が来て、家族で空港へ向かった
荷物検査で私のスーツケースが重すぎるため超過料金を払わなければならなくなった
「お前、ももの荷物は見たのか?」
『見てないわよ、だってあの子何時に帰ってきたと思っているの?』
「ももの荷物は、あれだけ見ろって言っといただろ」
空港で夫婦喧嘩が始まる
通路脇で、私のスーツケースを開けて父は驚く
「もも、ティッシュとかはあっちでも買えるから」
「こんなに文房具いらないだろ」
どんどん荷物が減らされて超過料金がとられないところまで減った
私は恥ずかしかった
まだ18歳、ナプキンを山ほど入れたスーツケースを公衆の面前で開けられた
vol2へ続く