あやとり家族36〜お前は野良犬と一緒だから〜
父に言われた一言
高校生の頃、夜11時頃に帰宅するとすずちゃんがお父さんに怒られていた。
リビングの横ではお母さんがその会話を淡々と聞いている。
「ただいま」
「おう、お帰り。遅かったな、部活か?」父が言う
「うん。部活の後、社会人の人と練習してきたから」
「頑張ってるな」
その後部屋に入り、着替えてご飯を食べにリビングに戻るとまだ怒られている。
雰囲気が悪いのでさっさと食べて部屋に戻ろうとすると、会話の内容が聞こえてきた。
「お前は男が落としたくなるような女なんだ。こんな遅くに帰ってきてわかっているのか!」
私は、お母さんを呼び出し何があったのか聞いてみた。
「すずちゃんがね、9時に帰ってきたのよ。それでお父さんが怒っているの」
もう2時間も怒られているらしい。
”ん?私今帰ってきたんだけど。11時だよ”
なんで怒られないの?
私はお父さんに聞いた
「お父さん、私今帰ってきたんだけど」
「お前は良いんだ、部活頑張っているんだから」
「でも11時だよ」
「ももちゃんは大丈夫。野良犬と一緒だから。どこかほっつき歩いていてもお腹が空いていれば帰ってくるから」
と笑いながら言われた。
その時は私は自由でよかったって思った。
すずちゃんは可哀想。9時で怒られるんだから、2時間も。
でも後から考えると、私のことを女扱いしていない。
やはりすずちゃんはお嬢様扱い。
大人になるにつれこの記憶がどんどん深く突き刺さる。
双子だから平等にって誰が言っていた?
個性を大事にしてくれていたのだろうけど、言い方があまりにも雑。
私だって心配されたい。
すずちゃんと同じくらい大事に思って。
こういう何気ない言葉や態度。
双子を1番比べていたのは両親だ。