あやとり家族三十
いじめの始まり❷
いじめる対象に全く響かないと、いじめ甲斐がない。
いっちゃんは、1人で私をいじめるのが難しくなってきたようで、他の友達をもっともっと巻き添いにすることにした。
始めは「ももちゃんは人に借りてばっかりいて返さない」って言われて。
母が絵の具を買ってくれなかったから、そのことを言われた。もちろん返せない。
そういうところからも目をつけていたんだなと。
色々なやり方でいじめられたが印象に残っているのはこの2つだ。
❶嘘をつかれる
「ももちゃんは、みおちゃん家の冷蔵庫を勝手に開けて、何も入ってない」って言ったんだって。
っと言う嘘をクラス中に広めた。
男子の1人から「お前、みおちゃん家の冷蔵庫勝手に開けたんだってな」
って言われた。
「開けてないよ。誰が言ってたの?そんなこと」
「いっちゃんが言ってた」
私はすぐにいっちゃんの所に行って、なんでそんなことを言ったのか確認した。
いっちゃんは、困ったそぶりをして顔だけ怒っている。
「やっていないことを言わないで」と自分の意見を言った。
それでもいっちゃんの影響力は、途轍もないものに既になっていて。
私がみんなに「やっていない」と伝えても信じてくれる人と信じてくれない人にわかれた。
特に男子は信じてくれなかった。いっちゃんは可愛かったから。
信じてくれている女子もいっちゃんの前では、私と話をしているだけで「なんで話したの?」と言われてしまうからそっけない態度をとるようになっていった。
そんな中でも、いっちゃんがいない時に私に「ごめんね」と言う友達がいた。
まだ理解されているという安心感は少しあった。
❷1人だけ仲間はずれ
ある朝、学校へ行くと「昨日何が当たった?」とクラス中で盛り上がっている。
鉛筆やノートを持っている子もいれば、おもちゃを持っている子もいた。
「ももちゃんは何が当たったの?」何気なく聞かれて意味がわからなかった。
「あっ、なんでもない」と質問する相手を間違えましたと顔で話している。
男子のうちの1人が「なんでももちゃん昨日来なかったの?」って聞いてきた。
「ん?何があったの?」
「まみちゃんの誕生日会だよ。お前以外クラス全員来ていたよ」って。
びっくりした。
クラスの中で私だけ呼ばれていないことに。
まみちゃんは私が保育園に行っていた時からの友達で一番仲が良かった。
だけどいっちゃんの一番のお気に入りの子でもあった。
いっちゃんは、まみちゃんに徐々に近づき二人組を組むようになった。授業で移動するときも一緒に行こうと誘ったり、2人で遊ぼうっと約束したり。少々強引なやり方だったが、優しいまみちゃんに断る理由もない。
それまでは、まみちゃんと私はいつも一緒に遊んでいた。小一の時も小二の時も同じクラスだったし当たり前のことだった。
だからそんなまみちゃんが、私だけ呼ばないなんてあり得ないと思った。
私は、まみちゃんになんで呼んでくれなかったのかを聞くことにした。
まみちゃんは、申し訳なさそうに言った。
「本当は呼びたかった。パパとママからもももちゃんは来ないの?って聞かれた。でもいっちゃんが絶対に呼んじゃダメって言うから呼べなかったの。本当にごめんんね」って。
「本当は呼びたかったの」って。
これがいじめというやつなんだ。ってその時初めて感じた。
この日はクラス中、まみちゃんの誕生日会でもらったお返しプレゼントを、お互いに自慢しあって私以外はみんな楽しそうにしていたことだけは覚えている。