あやとり家族④
すずちゃんへの虐待
鯉が泳いでいるじーちゃんが作った池。
日中になるとじーちゃんが缶のふたを開けてスイミーを取り出し餌をあげていた。
「ももちゃんもやりたい」
一緒に餌やりをすることになった。どのくらいの量をあげていいかもわからないから、コップに一杯だよって教わって。でも雨の日は外に出ないじーちゃんだったから「ねえ、鯉に餌あげていい?」なんて独りでできる喜びに浸っていた。
いつも見ている池では時々、ショーが行われていた。
お母さんがすずちゃんの髪の毛を掴み池に顔を沈めたり出したりする。
時々体ごと投げ入れていた。
それを見つけたばーちゃんが大声で止める。
私たち双子が生まれた時、平等に二人一緒に育てたかった母の思いとは裏腹に「年子の子どももいるのに3人育てるのは大変だろう」「この子の方が顔が可愛いからこの子は私が面倒見るよ」とばーちゃんがすずちゃんを本家で育てることに勝手にしてしまったらしい。
大人になって母に聞いた時、こう言われた。
すずちゃんは目鼻だちがはっきりしていて可愛かった。私は本当に猿みたいな顔立ちだったと。
母は、自分の手で育てたかったがそれがうまくできないジレンマと、私を置いてすずちゃんだけ連れて行ってしまうことで、平等ではなくなる子育てに腹が立ったんだろう。そういう時に限って、ばーちゃんに直接は言えないからってすずちゃんに虐待をくわえていた。
それを見ていた私の当時の心境は、お母さんはすずちゃんにこういう事をする人、仕事的な感覚。だからそれが悪いこととか可愛そうとかそういう感情が一切なかった。なんなら池の鯉の心配をしていたのかもしれない。
自分が双子である感覚もないし、一緒に暮らしている人たち。家族という概念も全くなかったんだと思う。
なぜ別々に育てられたのかは大人になってから母から聞いた話だったけど、きっと彼女もADHDやASDの傾向にあるんだろうって主治医の先生が言っていたことが理解できる説明の仕方だ。
すずちゃんを池に沈めたりしたのも悔しかったからって言っていた。
それを見て育った私が今の私。
じーちゃんもばーちゃんも死んだ。父も51歳で死んだ。
母は健在だが翻弄されるため距離を置いている。
それでも勝手に家に来たりする人である。
誰が悪いとか正義とか悪とかどうでもよくて、ただただ
「まずは、自分のことだよ」
ってそれだけ考えています。