あやとり家族二十一
奥さんがいる偽物のじーちゃんと、私のばーちゃんが一緒に住んで20年以上、何があったのか。
偽物のじーちゃんには奥さんがいる。だけど、ももちゃんのばーちゃんと暮らしている。それも、ももちゃんが産まれるずっと前から。
「ももちゃん、一緒によしえおばちゃんのところへ行くかい?」
よしえおばちゃんとはじーちゃんの本当の子どもである。車で20分くらい走らせたところにあるそこの家にいくと「ももちゃんいらっしゃい」と優しく歓迎されリビングに通される。そこには双子である自分というものはなかった。
すずちゃんと比べられることもなく”ももちゃん”として扱われる。ジュースをこぼしても怒られない。私にとってはとても居心地の良いところ。いつでもついて行っていた。そこが一体どこなのかわからずに。
リビングの横、襖の奥にはじーちゃんの本当の奥さんが寝たきりの状態で布団に寝かされていたことを知ったのは後のこと。じーちゃんは度々自分の本当の家に帰っては、よしえおばちゃんと会話をして小一時間で帰る。その際奥さんとは一言も言葉を交わさない。
ただ、行くだけ。顔も見ない。寡黙で頑固なじーちゃんだったからこそ、そういうやり方でしか表現できなかったのか。自分が奥さんと喧嘩して、もう何十年も家を空けてしまっているからなのか。
じーちゃんは、よしえおばちゃんのところに行く時も決して人に隠さなかった。ばーちゃんにも行くことをきちんと伝えていた。お母さんはももちゃんを連れ出してくれるじーちゃんには感謝していたが”よしえおばちゃんの家”というのを気にする素振りがあった。
偽物のじーちゃんとばーちゃんが出会ったのはだいぶ昔のことだと聞いている。当時ばーちゃんは保険の外交員をしていた。じーちゃんの家にも時々足を運んでいて2人は顔見知りだった。
ももちゃんのばーちゃんは当時離婚したばかりでお金がなく、私の父を育てながら働いていたため貧乏だったが家はあった。
偽物のじーちゃんはというと一代で財を築き、お金は持っていた。しかし奥さんと喧嘩をして家を出てしまったため家がなかった。
お金を渡すからしばらく泊めてくれ、っとういことから始まりいつの間にか一緒に暮らすようになり、子どもを下ろすこともあったとか無かったとか。
だから、ももちゃんが産まれた時は既にいたし、当然ももちゃんのじーちゃんとして君臨していた。それが偽物のじーちゃんだったなんてね。
こんな話を子どもの私に説明したのは、もちろんお母さん。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?