
声をかけるべきか、かけないべきか。それが問題だ。
今から、書く話は 公共の女性用化粧室で起こった数々を綴るものである。
もしかしたら、読者の方の中に まさにその経験者だったことがたる方もいるかもしれない。
そのため、こちらの意図と反して気を悪くすることがありましたら、ごめんなさい。
念のため、始めにお詫びしておきます。
☆☆☆
まだまだ朝晩は冷えたり、肌寒い日もあるけれど、
かなり暖かくなり、桜のたよりもあちこちで聞かれるようになった。
ここ 千葉県でも、重いコートを脱いで、軽いコートやジャケットに身を包む人も増えている。
暖かくなってくると共に、私がなぜか目撃しやすい「うっかりさん」が増える。
街中ではない。
ショッピングモールや雑居ビルなど
公共の化粧室の室内や周辺で遭遇する、「うっかりさん」だ。
「うっかりさん」。
つい、うっかり化粧室内に 上着を置き忘れる、とかなら 割りとよくあるかもしれない。
私がなぜか遭遇しがちな 「うっかりさん」は、
スカートの長短にかかわらず、
スカートの裾を下着やストッキングに挟み込んだまま、手洗いしていたり、
そのまま化粧室から出ていこうとする
「うっかりさん」なのだ。
要は、意図せずに下着を露にしたまま、
化粧室から去ろうとしてしまう女性である。
☆
なぜだか昔から、私はそういう「うっかりさん」に遭遇することが多い。
一瞬、思わず二度見してしまう。
「この人はわざとこうしているのだろうか...?」
いや、そんなはずはない。
慌てていて、きっと裾を正し忘れたのだろう。
そこで問題が生じる。
「スカートが捲れていて、下着が見えているという事実を、伝えるべきかどうか?」
想像してほしい。
彼女は全く気づいていない。
気づかないまま手洗いをしたり、
化粧直しをしているのだ。
そこに、全くの他人の私が事実を伝えたらどうなるだろう?
でも。
そこはバカがつくほど正直者の私だ。
これまで、遭遇した全ての「うっかりさん」にそっと事実を伝えてきた。
急いで化粧室から去ろうとする人も含めて。
なぜなら、そのまま外へ出れば、
多くの男性の目にも触れることとなる。
その時に抱くとてつもないくらい恥ずかしさに 比べたら...と思うからだ。
「あの、突然すみません...
言いづらいんですけど、貴女のスカート...」
そこまで言うと、多くの女性の反応はこうだった。
「し、知ってますから!!」
顔を真っ赤にして怒る女性もいた。
知ってることをわざわざ言うなよと
ぶつぶつ文句をいう人も。
いや...知ってたらスカートそうはならんやろ...
そう思うのは正直なところだし、
バカ正直に言うこともなかったかな、と思う。
けれども、しっかりとスカートが正されて化粧室を出ていく姿を見ると
やはりほっとするのは正直なところだ。
たとえ、私が バカ正直な余計なおせっかいでも。
☆
先日、夫とショッピングモールで買い物してから、
モール内のカフェに入った。
途中で、同じ階の化粧室に行くと。
久しぶりに派手にスカートをまくれた状態で
化粧直しをしているおばさまがいた。
うわぁ...これはどうすればいいんだろう。
でも、やはり、正直者の私がいた。
「あの、すみません。
余計なことですけど...」
「ああっ!スカート!これ気づかなかったわ!ありがとう」
会釈をして手を洗う私。
見た目で判断してはいけないだろうけど、これまでの 「うっかりさん」なように逆ギレしたり、ガン無視の人だろうなと思っていたからだ。
化粧室を済ませたおばさまは、
しっかりと裾が正されたスカートで化粧室を後にした。
きっとこれからも、「うっかりさん」には遭遇するかもしれない。
それでも、私はバカ正直なおせっかいおばさんでいよう。
そう思った。
☆☆☆
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