中国ビジネスはじめの一歩
中国人との付き合い方や中国式〇〇について話すときは、少し勇気がいる。
なぜなら、スケールがものすごく大きいから。
その人口は世界一で日本の11倍以上の約14億人、国土にいたってはなんと日本の約26倍の960万平方km。
1億2千万人いる日本人をざっくりまとめて国民性を説明するときでさえ難しいことがあるのに、「中国人とは〜」なんて語ろうとはおこがましい!
そんなことを思いながら中国・深センで仕事をして生活して1年半。
中国人との付き合い方で大きなトラブルはないかわりに、小さなストレスが順調に積み重なってきた。
これが経験値だとしたら、そろそろいいじゃないかと。
というわけで今回は、実体験を乗り越えて体当たりで獲得した現地の中国人とうまく付き合う方法を、リアルなエピソードと共にひとつご紹介したい。
中国人とビジネスをはじめるときとか、もっと単純に友達になりたいなと思ったとき。
そして私のように、国際結婚をして相手の家族(ものすごく数が多い、およそ30人)と友好関係を築きたいとき。どこかで誰かのお役に立てたらいいなと思って書きました。
中国人とのお付き合い はじめの一歩
まずはじめに準備するもの。それは贈り物。
中国では礼物と呼ばれ、それはそれは重要なもの。
日本人同士ならば「つまらないものですが」とサクッと箱詰めのお菓子でも持参するところ、中国人へのいちばん最初の贈り物は消え物、つまり食品は基本NG(人による)。
この、いちばん最初の贈り物がいちばん大切らしい。
職場の直属の上司(自分の評価や給料を決める権限がある人)や、結婚相手の両親への最初の贈り物は、日本で購入してきた日本製品とか、日本の伝統工芸品とか、派手で豪華でかさばるものがいいらしい。
昔、なぜかうちにありませんでしたっけ?
北海道の木彫りのクマとか
日本人形とか
もう少し合理的な場合は、炊飯器や電子レンジなどの家電もアリ!
こういう派手で豪華でかさばるものたちは、上司はオフィスに、実家の両親は居間に、どどんと飾るんだとか。そして訪問者に自慢するんですって。
そのためのスケールの大きさなんですね。納得。
全然知らずに、いちばん最初の贈り物をいちばん最初にすっとばしまくった私!
うちの婚約者・ヤンくんは私の性格を理解してくれているのか、細かいことを気にしない本人の性格なのか、こういう中国式マナーを一切教えてくれない。
聞いたら教えてくれるけど、そもそも私がわかってないから聞きようもない。
中国式のルールやマナーを全く知らない私が、初めて贈り物を意識したのは、旧正月にヤンくんの実家にご挨拶に行くときだった。
そういえば、明日から実家に帰省するからお土産買わないといけないよね、おまえが。
わたしが???
うん、初めての贈り物は超重要なの。価格もモノも、立派なものじゃなきゃダメだよ。
うん、そっか。
明日出発だよね。
そして現在時刻20時まわってますよね。
あわててタクシーに飛び乗って、閉店間際のショッピングモールへ駆け込んだ。
移動中にすかさずwechatで日中夫婦の友人にヒアリング調査。
ダンナの実家への最初の贈り物、なんにした?
回答1:日本で買ってきた豪華な飾り羽子板
回答2:日本で買ってきた電気シェーバーとか美容家電とか、いろいろたくさん
日本でッッ!
私も買いたかったなあーッ!!
この回答をもとに電気シェーバー(パクリか)とか炊飯器(ステレオタイプか)とか、ロボット掃除機とかいろいろダッシュで検討(閉店30分前)。
家電ならすぐに使えるし、高価なものがあってよさそうだと見当をつけて、ヤンくんに「これはどう?」とひとつひとつ Yes・Noクエスチョンで相談しながら決めた。
ファーウェイのキーボードつき最新型タブレット。
日本円でおよそ6万円。Wechatペイでサクッと支払いましたよ。
この価格帯が高価といえるのか、ファーウェイの最新型タブレットが立派だと思ってもらえるのかどうか、全然わからない。
ひとつだけ確かなことは、木彫りの熊や日本人形よりかは、もらったら嬉しい。私が。
翌日、飛行機と電車を乗り継いで実家に到着。挨拶と一緒に手渡ししたんだけど、喜んでもらえたのか全然わからない。
なぜなら言葉がわからない。
そもそも、「ヤンが嫁を連れてきた! しかも外国人の嫁!」ってヤン家の周辺は大賑わいだったらしい。それすらわからない。言葉がわからないって圧倒的に無力だ。なにもわからない。
雰囲気でなんとなく感じとったのは、贈り物も外国人の嫁の初訪問も、まとめて喜んでもらえているような歓迎ムード。
それぞれの項目ごとの得点は未だに謎。いつか私が中国語で会話できるようになったら「ねえねえ、あの最初の挨拶の時さ・・・」と聞いてみよう。
まあでも、前日の夜にヤンくんが何も言わなくて、手ぶらで無言で初訪問をしてしまったら、それはそれでひんしゅくを買ったのかもしれない。
正解がわからない。だから苦手なんだ、贈り物って。
一流の雑談力とか、伝え方が9割とか、そういうわかりやすくて即効性があるものが好きな私。
反対に、折に触れてのご挨拶とか、相手好みの贈り物とか、形骸化というか、遠回りで形式ばった曖昧なものが苦手だ。
とはいえ私が住んでいるのは中国。仕事相手もパートナーも家族も、ほぼ中国人。苦手だからやらないなんていよいよ言ってられなくなってきた。
この最初の贈り物を起点に、こまめにせっせと継続して贈り物をするのが、友好関係を築くコツ。
中国人とのお付き合い 二歩め以降
日本に帰省したときの日本製品、この場合は健康食品や化粧品。それから、旅先でのちょっと「してない」もの。
あなたのためにわざわざ探して買って持ってきたんですよ
中国で贈り物をするときの姿勢は、こういうのが基本らしい。
「ついでにちょっと」「つまらないものですが」「ほんの気持ちです」なんてうっかり言いたくなる日本人気質とは真逆でツラい。
以下は、中国・深センで5年以上働いている友人への聞き取り調査。
中国人は、優しくて何もメリットない人には塩対応が基本! 私の場合、贈り物しまくりで、塩対応を緩和したね。いまじゃ私にプレゼントとかくれたりするようになったよ! やはりコツコツ仲良くなるしかない。
その担当者が何が好きか、(食べ物なのか化粧品なのか)普段からリサーチして、こまめにプレゼントして、こっちはあなたが好きですよ! アピールをすると変わってくるよ! ちょっと現金だけど、はじめはこんなもん。
私の職場のビザ担当の風当たりがとにかく強くて、なにか打つ手はないかだろうかと考えて相談したらこんな回答をいただいた。
あいたた、時間も手間もお金も全部かかる、壮大なるめんどくささ。
好き嫌いじゃなくて、仕事じゃん。仕事してくれよ。私は私の仕事してるじゃん、と言い返したくなるけど、そういうことじゃないっていいかげんに思い知らされた。
人間は論理じゃなくて感情で動く。
あの人は現金だからねえ・・・【慣用句】目先の金、目の前の利害によって行動が左右される人の様子を表す(Yahoo! 知恵袋より一部引用)
いいものくれるからなんとかしてやろうとか、やってもやらなくても同じならやらないとか。
現金な人はわかりやすくて、いっそすがすがしい。
ゼロから始める中国人の関係構築は、これくらいの手間ひまが必要ってことだ。
そういえば、デスクの上にそっとお菓子がおかれてたり、目があったらホイッて謎の食品を手渡してくれたりしてたことがよくあった。中身も食べ方もノーヒントだったな。
あげるのももらうのも苦手だから、もらったあとにどうしたらいいか困ってたけど、あれもきっと友好関係のひとつなんだろうな。私と仲良くしてくれようとしていたのかも。
私もこれからがんばろう、贈り物。
友人の聞き取り調査をしながら、郷に入れば郷に従えの精神、みたいな気持ちを固めはじめたら、メッセージがまたポーンと届いた。
最近、いろいろ厳しくなってきたからビザ取得の新基準について調べて欲しいとお願いしたんだけど、全然調べてくれなくってさ〜。せっせと贈り物してどんなに気にかけても、ちょっと仲良くなったぐらいじゃ、前例のない事とかまずやりたがらない。結局自分で調べたよ!
いやダメじゃん!
5年以上の贈り物とおしゃべりでコツコツ積み上げた関係構築、いざというときに全く役に立ってない!!
普段からこまめにコミュニケーションや差し入れをしても、「なんかめんどくさい」の一言で消し飛ぶ。
人付き合いはセオリー通りにはいかない、至難の業にちがいない。