とあるエンジニアのスクラム成長記
こんにちは、採用担当の高田です。
前記事「星野リゾートのスクラム 現在地」をリリースしたところ、他の記事よりもアクセスが多く、ご好評をいただきました。ご覧頂いた皆様ありがとうございます。
今回はそれを受けて、スクラムが実践されているプロジェクトで、活躍・成長するひとりのエンジニアにフォーカスをあててご紹介をしたいと思います。
■ 期待膨らむプロジェクトの船出だったが・・・
--- CMSプロジェクト、はじまりはどのような感じでしたか
藤井 行:自社開発CMSのプロジェクト始動にあたっては、まずマーケティング部門の担当者と、自分、2人の間でスケジュールの見積もりをはじめました。
当時、星野リゾートはすでに暫定版としてWordPress製のCMSを運用しており、現場からいくつか課題もあがっていました。それにいち早く答えたい、そういった気持ちが一人歩きしてしまい、 ステークホルダーと私の希望がふんだんに盛り込まれた、実現性に不安の残る見積もりをしてしまいました。
さすがにこれはまずい! と思ったので、まずは、エンジニアチームのリーダーに相談。 この時はまだ先行きの危うさを共有しただけで、どうすれば現場のニーズにあったCMSを、現場の求めるスピード感で作り出せるか、 プロジェクトの進め方について大きく悩みました。
計画立案と同時に、とにかく手を動かし、フロントエンドやバックエンドの基礎作りの開発もはじめましたが、あの頃はとにかく不安だったのを覚えています。
そんな不安真っ只中のときに、スクラムマスター河野さんが入社しました。以前からスクラムでのプロダクト開発にとても興味と期待を持っていたため、 「このチャンスしかない!」とすぐに声をかけさせてもらいました。
この時が、この「星野リゾートCMS」というプロダクトにおいて 最初の大きな一歩だった思います。
--- 河野さんは相談を受けたときどう思われましたか
河野:入社してから様々なチームを観察していたので、CMSプロジェクトチームの状態も何となく把握していました。当初はスクラムマスターとして入社したからといってスクラムを押し付ける気はなく、一歩引いてチームが成長するきっかけとなる問いかけをしながら、伴走する気持ちでいました。
そこに行さんから「スクラムでプロジェクトを良くしたい!」とアツいお声がけを頂いたので、自分の中でもギアをいれかえて「自分のスクラム経験すべてをぶつける」ことを決意しましたね。
■問いかけから紡ぎ出す、自分自身の成長
---河野さんから見て、当初のプロジェクトの状態はどうでしたか
河野:行さんは、やや悲観的に話していましたが、チームメンバーはみんな前向きだったので、噛み合いさえすれば問題ないと思っていました。また最初に言っていた見積もり問題も、プロジェクトあるあるなので、特段身構えることはなかったです。
行さんがテックリード兼リーダー的なポジションで、グイグイとメンバーを引っ張っていました。ただこれはスクラム的には健全ではない、まずは行さんへの問いかけをはじめました。
--- どんな問いかけを
河野: よく質問したのは「これは行さんがした方がいい仕事ですか?」という問いかけです。
行さんは馬力のあるエンジニアでしたし、プロジェクトの初期から参画していたので「とにかく自分がなんとかしないといけない」という気持ちが強かった。責任感があって良いことですが、開発はチーム戦です。
メンバーも、ある程度の積極性はありましたが、一番できる人が先頭でタスクを消化してしまうと、萎縮して主体的に動きにくくなってしまう。
なので行さんには、一度立ち止まってチームを眺めてほしかった。
--- 行さんはその問いかけをどう思われましたか
行: ハッとしたというか、「立ち止まる」というのを体感しましたね。
自分自身、何事にも全力であたりたいタイプなので、CMSプロジェクトにはかなりの力が入っていたと思います。なので、目の前しか見えず、メンバーがただ自分の後ろをついてきているだけになっているのに気づけなかった。
勇気をもって立ち止まり、タスクを手放すことで見通しがよくなり、チームへの理解が深まりましたね。
河野:「名プレイヤーが必ずしも名監督になるわけじゃない」という典型だったかもしれませんね。ただこの「立ち止まる」という気付きはとても良かったと思います。
行:「立ち止まる」と同時に気づいたのが「プロダクトは自分のものじゃない、チームのものだ」ということ、そこからセレモニーの発言ひとつとってもいろいろ変わりましたね。
以前は、メンバーから「どうしたらいいですか?」みたいな質問に対して、すぐ自分の答えを言っていましたが、今は質問をしています。じゃないと自分の答えがそのままプロダクトにつながってしまい、メンバーの主体性を奪ってしまう。河野さんじゃないけど、とにかくメンバーに問いかけていますね。
自分みたいに、40歳を過ぎてから仕事のスタイルを変えるのはとても勇気がいることだと思うんですけど、スクラムを通して実際にスタイルが変わったときは結構びっくりしましたね。まだ自分、成長するんだとw
■レビューを重ねて、ステークホルダーとワンチームに
--- プロジェクトチームの転換点みたいなものはありましたか
河野:ずっと成長し変化しているチームだったので明確なものはありませんが、スプリントレビューは意識が変わるきっかけでしたね。
私が参画してから2ヶ月ぐらい経って、最初のスプリントレビューを行いました。以前の記事でも話したようにフラットな組織文化のおかげで、ステークホルダーたちのフィードバックは量・質ともに良く、前向きなものが多かったですね。
開発メンバーもそれを受けて、
「よりステークホルダーたちが喜ぶプロダクトを作りたい」とエンジンがかかった気がします。
チームが熱をおびていくと、メンバーから
「フィードバックの真の意図はこうではないか、もう一度確認してみよう」
「レビューの時にこんな画面があった方が、ステークホルダーはより安心する」
といった、主体性をもった行動につながっていくんですよね。これがスクラムの醍醐味だと思います。
行:「相手が喜ぶプロダクトを作りたい」気持ちってとても大切で、すぐ伝わるものだと思うんですよね。
一度伝わるとステークホルダーたちも前のめりになって、より熱のこもったフィードバックをかえしてくる、すると私達エンジニアも応えたくなる。このサイクルが出来たときのステークホルダーを含めたチームの一体感はとても気持ち良いですね。私自身、十数年開発してきましたが、初めての経験でした。
■チームの自律を支えられるエンジニアに!
--- 今回の開発を経て、次なる目標はありますか
行:自分がいなくてもまわるチームを作り出すこと、つまりチームの自律を支えられるエンジニアになることですね。
「立ち止まる」ことで一番目にするようになったのが、メンバーが「主体的」に動いている場面です。そしてその場面が多くなればなるほど、チームの開発はリズミカルになり、ベロシティもあがる、なによりもその開発自体が楽しくなってくるんですよね。
エンジニアとして第一線で戦いつづけながらも、同時に、チームの自律性を育む、「メンバーの主体性」を支援できるエンジニアを目指して行きたいと思っています。
いかがだったでしょうか。
今回は当初苦戦していたエンジニアが、スクラムを通して、自己成長を実感するお話をお届けしました。
情報システムグループには他にもスクラムが存在し、日々メンバーは切磋琢磨しています。後日、他のスクラムの話も記事にできたらと考えていますので、楽しみにしていてくださいね。