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教壇に立ち続ける 94 映像作品×古典【note限定記事】

時間は自分で作るもの。どうも星野です。11月の定期更新日は水・土。今日のお題は「映画を使って古典の授業」です。生徒の要望が大きかった「映像作品を観て古典文学の語りに注目する」という授業を構想しましたので共有いたします。この記事を読んで、参考になったなーとか、いいなと思って頂けたらサポートをお願いします。minneとFantiaはこちら。毎週土曜に更新中です。

この授業の構想の発端には、私の授業があまりにも速く、周囲の先生と進度が合わなくなってしまったという事情があります。しかしやるからには、古典文学に触れてもらいたい。その私の無計画さと反骨精神と何でも勉強に繋げたがる癖が合わさったがゆえの授業です。授業時間のつなぎとして入れたなかでも「様々な『語り』を分析する」という目標をもって立てたものでもあります。
対象は高校3年生で、大半が推薦で受験を終えた、気の抜けきった生徒たちです。そして彼らは、何かを熱心に研究したり考えたりするということが致命的に苦手です。語彙も少なく、学習言語も未定着で、しかも学習意欲も習慣もない。どうして今まで単位を取れていたのか謎なくらい、やる気のない生徒たちなのです。そのままで大学生・社会人として生きていくにはいささか不安があるので、私は常に「今のままじゃだめだよ」とお灸をすえているのですが、どうにもいまいち伝わっていないようなので、ここで一発「大学の講義チックな授業」をぶち込んで、こんな勉強をするんだよと現実を知らしめてやるのがひとつ彼らへの課題としてあります。私も大学で受講したアニメ概論の授業の知識を総動員して事に当たる予定です。これで彼らもきっとやる気を出すだろう。そう信じたい。

授業は1コマ完結です。勤務先は50分授業なので、機材の準備・プリントの配付・動画の再生で30分、考察で15分、まとめ5分の予定です。
具体的な教材は高畑勲監督の「かぐや姫の物語」(2013年)を使用します。私はちらっと視聴しただけなので、理解が浅いところもありますが、具体的には物語の核心部分である「かぐや姫が月に帰ってしまうシーン」を扱おうと思っています。
授業の流れは、①資料を配付し、映像を鑑賞しながらメモを取る(資料には「竹取物語」の月に帰るシーンの記述およびレポート用紙のような罫線が書きこんであります)、②議論しながら「語られ方」の違いに着目してレポートを仕上げる、この2段階です。時間割の関係上この1コマしか使えないので、ぎゅうぎゅうになっていますが、討論の時間を増やしたり、参考文献を紹介して読ませたりするのもアリだと思います。
この授業では、ただ単に何も考えず映像が鑑賞できるわけではありません。レポートを500字以上でまとめる作業を宿題に課すので、その下準備をしなければならないのです。具体的な発問内容は、①かぐや姫の昇天のシーンの描かれ方の違いを3つ以上挙げる、②どうしてそのように描いたのか理由を考える、③そのうえでこのような映像作品がヒットした理由を考える、の3本柱でいきます。彼らはきっと「映画を観られる! わーい!」くらいにしか考えていないので、メモを取らないと(そして自力で古文を読解しないと)レポートが書けず提出物の遅延で成績が下がる……という寸法になっていることを周知させなければなりません。今まで毎週課していた課題と比重は同じにするにしても、提出が無ければそれだけで平常点がガクンと下がる、ということは明言しておくことにしています。卒業できないからね、させないからね、こういうことを大学の授業ではやるからね、という練習としても活用していくつもりです。
中には優秀な生徒もいるので、難なく書ける生徒にはどんどん深める対話を行いますし、何も浮かばない大半の生徒には個のつまずきを把握して全体に投げ返す方法で共有していく予定です。そうでもしないと40人学級なので細かくはみてあげられないので……
レポートの形式はおそらく小論文や現代文で学習しているかと思いますので、特に口出しはしませんが、内容についてはガンガン指摘していきます。剽窃が横行するかと思われますので、その際は容赦なく生徒指導に上げて無期停学の処分にしていただきます。
こういう「荒れた学校」(だと勝手に思っているのですが)では、飴と鞭作戦が一番効くと思っていて、適度な締め付けも、本当はしたくないけれどやらなければならないのがちょっと心苦しいです。私も別に岩木ではないので感情はあります。しかしそれ以上に、生徒に「真剣に勉強すること」を体感してもらいたくて設定した単元なので、そこは生徒にも頑張ってもらおうと思っています。

この実践の振り返りも、後日アップロードしますのでお楽しみに。それでは、また。

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