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教壇に立ち続ける ㊲ ナラティブについて【note限定記事】

遂に自宅にSurface Proが届きました。お財布には特大ダメージです。は……働く……。どうも星野です。雨で頭が重いですが、なんとか執筆しています。本もおようふくも届くらしいので、本当に破産するんじゃないかと気が気ではないですが。
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今日は趣向を変えて、「ストーリーテリングの技法」についてお話したいと思います。なんだそれ? という方もいらっしゃるかと思うので、まずはそこから。
「ストーリーテリング」とは、おおざっぱに言えば「物語を語る、その方法」のことを指します。分かりやすいたとえをするなら、読み聞かせや、昔話を語って聞かせることなどもストーリーテリングです。何かを効果的に伝えるために、具体的なエピソードを入れながら語ること。私はこれを、高等学校の国語学習の場で応用しています。
国語は文学作品やそれに類するものを扱うので、当然ストーリーテリングとの相性は抜群に良いのですが、実際のところこの技法は幅広いジャンルの教育に応用がきくと考えています。

自分のことを誰かに話したい。わかってほしい。あるいは、悩み事を誰かに話して一緒に解決策を探ったり、あるいはただ聞いてもらえるだけで安心したり。そういうことって誰しも経験があると思います。それを専門用語で言うと「ナラティブアプローチ」(語って聞かせることによる自己理解の深まりやセラピー効果の向上)にあたります。「ストーリーテリング」と「ナラティブアプローチ」は似た性質を持っているのですが、前者は物語を語る「技法」に重点を置き、後者は「語りの効果」に焦点を当てている、という感じでしょうか。ストーリーテリングはどちらかと言えば語りの技法、どうやって語れば印象に残るか、その分析手法までをカバーしています。一方でナラティブアプローチは、対象者が自分のことを語り、聞き手はそれを受け止め、対話し、その結果何か解決方法を語り手自身で見つける作業、という意味合いが強いです。今までさんざんnoteに書いていた「アニマシオン」は「ストーリーテリング」のひとつで、「ナラティブアプローチ」は「カウンセリングの技術」、というのが適切な認識でしょう。

私がこれらふたつを知ったのは、統合失調症とうつでどん底にいた時でした。自分の先行きに希望が持てず、教育実習で神経をすり減らし、もういっそ教職なんてやめてしまおうとさえ思っていました。その精神状態を改善するために、カウンセラーさんが教えてくれたのが「ナラティブアプローチ」でした。
日記や短歌、どんな形でもいいから思ったことを書き出す。書いて、その結果何が自分にとってストレスだったのか、何が原因でつらかったのか、見極める。それに対して適切な解決方法を探る。そういう活動を週に一時間、カウンセラーさんと二人でやっていました。それが後々「物語ること」に対する興味が生まれたことと、卒業論文で出会ったアニマシオンによって、今私が実践している授業スタイルに行きついたのです。

私の授業スタイルは、徹底してトーク&チョークです。基本的に講義形式で、生徒は静かに話を聞きながら板書を写す。だからといって、私の授業は何も考えずにいられるほど生易しいものではありません。毎回こまめに発問をし、その結果をリフレクションシートやノートに書いて、思考の「足跡」をつけさせます。だから板書量はやたらと多いし、生徒にも負荷はかかっていると思います。その知的負荷が学校を卒業した後で役に立つだろうと思って毎回の授業に臨んでいます。その思考の「足跡づけ」のために応用しているのが、発問(ここでストーリーテリングの技法を使う)とリフレクションシート(ここでナラティブアプローチの手法を使う)です。
私の授業での発問は、文学批評に直結するものと、読解の実力を測るもの、そして本人の内的な成長を見取るものの三パターンがあります。文学批評につながる発問をしたら、生徒は「語りのテクニック」に注目して思考しますし、読解の実力を測るものでは前後関係・因果関係などから総合的に判断して答えを出します。その発問を生み出すために文学批評の書籍を読み、そこで得られた知見をストーリーテリングの技法を活用して発問として還元します。もうひとつ、生徒の内的な成長に関しては、ナラティブアプローチを応用して、生徒に「この作品は私の精神的なところに関わる、いわば『じぶんごと』なんだ」と思わせるための発問です。生徒自身が本文を読んで何を考え、何を課題としたのか見取るために、作品のコアの部分を自分なりに分析させます。楽しく学びながら己の成長に繋げられる授業のために、私はこのふたつの技法を使っています。

他にもナラティブアプローチなら生徒指導の場面だとか、ストーリーテリングの技法を、例えば数学の証明や美術の鑑賞などに活かすことも可能です。できることはたくさんあります。私もまだまだ足りないところがあるので、もっと勉強しなければならないのですが。

それでもこうしてお伝えして、興味を持っていただければと思い筆を執った次第です。関連書籍もいくつか出ているので調べてみてください。それでは、また。

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