現代語訳『源氏物語』をただただ読む 文庫版1巻
まえがき
紹介
読む本
→角田光代訳『源氏物語 1』2023年 河出書房新社
単行本もありますが、今刊行中の文庫版を読みます。全巻読む予定。
読む人
→ただの社会人、大学は理系なので文学に関わる専門的な学習は一切行っていない。
読む人の『源氏物語』についての知識
→話の筋と登場人物はなんとなくわかる程度。易しい解説書などは読んだことがあるが、現代語訳の『源氏物語』を読むのは初めて。
『源氏物語』って難しくないの?
今回読んだ角田さん訳は、難しく感じませんでした。
現代語訳した角田さんが、『格式高い古典文学、王朝物語ではなく、小説としてとらえることも、可能なのではないか。』とあとがきで書かれている。
楽しく1巻を読み終えた後に、角田さんのこのあとがきを読んで、「小説だった! 面白かった! 2巻も読まなくちゃ!」と心の中で叫んだ。そして2巻を買った。
細かな注釈はないので、平安時代の勉強には向かないかもしれない。
でも、千年昔に書かれた、バチバチに面白い日本の小説を、気軽に読みたい方にはとてもオススメ。
各章雑記
『源氏物語』は五十四章ではなく、五十四帖と数えるのが一般的ですが、わかりやすく章と数えようと思います。
河出文庫『源氏物語 1』には、『桐壺』~『末摘花』の6章が収められています。
桐壺
古典の授業でもおなじみ『いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に~』の章。
この章で、主人公、光源氏が爆誕。幼児の頃から禍々しいほど美しいと描写される。幼児の風貌をそんな風に描写することあるんだ。
源氏は帝の子ども。お母さんの桐壺は帝にとても愛されていたが、身分が低いのに帝に愛されたことをほかのお妃たちから嫉妬され、いじめられ、源氏を生んですぐに亡くなる。ページ数でいうと、冒頭から7ページで亡くなってしまう。
帝は、その後、桐壺とどこか似た美しさを持つ新しい妃を迎えます。
この妃は藤壺、源氏がずっと慕うことになる女性です(つまり、源氏は継母を愛してしまうんだね)。
桐壺をいじめていたその他のお妃たちが、身分の高い藤壺をいじめないの、リアルだなと思った。
帚木
雨夜の品定め! 語感は雅だけど、男たちが理想の女についてあーでもないこーでもないと語り合う雨の夜、って場面。
時代が違いすぎるのに、やりとりがリアルだった。イケイケの男子グループの会話で、面白いのになんか微妙に嫌。実際に、紫式部も盗み聞きしていたのかもしれない。
品定め時点で、源氏は結婚して正妻(葵の上)がいる。ただ、美人だけど隙がなさ過ぎる正妻とはあんまり仲良くない。
雨夜の品定め後、源氏は人妻、空蝉に言い寄る。
そこで『夜が明ける頃、迎えにきなさい』という、乙女ゲームみたいなセリフを空蝉に仕えている人に言い放つ。ちなみに、空蝉はめちゃくちゃ拒んでいた。
空蝉
源氏、空蝉の弟と寝る。空蝉の継娘とも寝る(こちらは空蝉と間違えて)。
短い章のわりに、インパクトが強い。空蝉が脱いだ衣を源氏が拾うシーンは、ロマンチックなような、変態っぽいような……。
夕顔
ユウガオはウリ科の、美しい白い花を咲かせる植物。
ユウガオの花が咲く家の女性(夕顔)に恋する源氏。藤壺忘れたんか!? というレベルで好きが加速している源氏。
だけど、夕顔は源氏に連れられて行った廃墟みたいな家で、亡くなってしまう……夕顔が亡くなる前に美しい女性の霊が出てくるんだけど、このシーンも退廃的なホラーっぽくて良い。
それから、この章で有名な六条御息所が登場している。
この場面で、六条の女君に使える女房と源氏が交わす歌の場面が艶やかで良い。歌の題材が朝顔になっているのも、夕顔との対比っぽくて良い。
(夕顔に憑いた幽霊は、六条御息所説をよく聞く気がするけど、違うっぽい。そのあたりの考察とかももっと読んでみたいですね。)
若紫
簡潔にまとめると幼女誘拐です。アウトかセーフかで言うと、周りの反応的に当時でもアウトっぽい。源氏も自分がおかしなことをしている自覚はある。自覚はあるけど止められない。
だって、十歳くらいの若紫が、大好きな藤壺に似ているから……書けば書くほどアウトな気がしてくる。これ以上、書かないほうがいいか。
ちなみに、この章で源氏は、継母の藤壺と密通している。これは本当に申し開きのしようがないほどアウトなんだけど、物語的にはドキドキする場面ではある。
末摘花
角田さんもあとがきで書かれていたけど、末摘花の容姿や性格の描写が秀逸。源氏がかなり末摘花を気の毒がっているのも、リアルだなぁ。
源氏は末摘花のことをはっきり不細工だと思ってるし、ネタにもしている。それでも、贈り物はちゃんとしてるから、誠実なのかな……。
今回はここまで!
『源氏物語 2』に続く。