運針が止まらぬように。
あの日は家族とテレビの前にいた。
大きな揺れは、遠く離れた地にいる私たちの天井すら震わせた。
いつどこで何があるかわからないから、今を大切に。
そんなことはわかっているけれど、いつもすべてが満たしきれている時ばかりではない。
たとえば、大切な人と些細なことで口論になり、そのまま家を出る。
それが最後の会話になるかもしれない。
ケンカをして、おやすみも言わずそのまま眠りについたら、もう次の朝、自分の目が覚めないこともあるかもしれない。
あの日から、どこかでそんなことを考えながら暮らすようになった。
パジャマを着て眠ることもなくなった。
できることは限られている。
できないことの方が多い。
やりたいことはもっと多い。
できることを毎日繋ぎ合わせて、ひと針ずつ上下上下と進んでいく。