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【日本神話②】黄泉の国 大走査線

 黄泉平坂へ行ってみようと、島根県松江市近郊を車で訪れました。訪問日時は2014年3月で、当時はスマホを持っておらず、車に搭載されたナビもGoogleマップほどの精度もなく、探り探りで道を走って、なんとか探し当てたという感じでした。

黄泉平坂伝説地の碑(2014年3月22日撮影)

 日本神話の「黄泉平坂」ではありますが、現在の地名では「伊賦夜坂(いふやざか)」というそうです。地域伝承でも死者の国へと向かう「夜見路越え」という風習があるようですね。

 前回に写真で紹介しましたが、雑木林の中にあるという感じです。写真ではそれなりに明るく撮っていますが、訪問時間的には夕方前くらい。そのせいで、「黄泉の国」の神話もあって、薄暗く雰囲気のある場所だったと記憶しています。

死者の国へ続く「黄泉平坂」の坂の途中。脇には駐車場も完備されています(同日撮影)

 雑木林を抜けた先は住宅が転々とあり、黄泉に国への大捜査は30分足らずで終了しました。「それ以外は何もない」という感じでしたが、イザナギが閉じた死者の国への門は、現在もそのまま、しっかりと閉じられていたようです。わずかな滞在時間ではありましたが、日本神話の比定地となれば、それはそれで想像を膨らませるだけで楽しいものです。

イザナミを祀る島根県松江市東出雲町の伊賦夜(いふや)神社(同日撮影)

 黄泉平坂の近くには、イザナミを祀る「伊賦夜神社」がありました。訪問時には人影もなく、ひっそりとしていた印象でした。こちらもまた、「黄泉の国」の神話から、静寂がまたなんとも言い難い雰囲気を醸し出していました。

伊賦夜神社の礼拝所。奥に本殿(同日撮影)

 それにしても、この神話。最愛の人の死をなげき、死者の国へ行ってなんとか蘇り(黄泉還り)を図ろうとする考えは、世界中で見聞きしますね。あと、「見てはいけない」または「振り返ってはならない」という「冥界の試練」の失敗談。

 漫画「聖闘士星矢」でも登場した、ギリシア神話の琴座オルフェウスの話。死んだ妻エウリュディケを迎えに冥界に行き、冥王ハーデスから「帰路では最後まで振り返ってはいけない」と言われたにもかかわらず、地上への光が見えた時にうっかり後方の妻の方へ振り返ってしまったことで、エウリュディケは生き返ることができなくなってしまいました。

 旧約聖書のソドムとゴモラの街の話。滅びゆく街から逃げる際、神の指示に従わずに振り返ってしまったロトの妻が、その場で塩の柱になってしまった話。

 メソポタミア文明の「ギルガメシュ叙事詩」では、ギルガメシュ王の盟友エンキドゥが冥界に旅だっだのだが、事前に告げられていた「冥界でしてはいけない行い」をしてしまい、冥界から帰れなくなってします。その後に無事に生還する。その後の物語でギルガメシュはエンキドゥの死後、不老不死の秘策を求めて旅するものの、「若返りの薬草」を蛇に盗まれて失敗する。「人生は一度きり、どう生きるか、よく生きよ」といった教訓が語られます。

 冥界の神の意地悪や、ひっかりやすい罠というより「死者は戻らない」という古より伝わる死生観を語っているのでしょうか?ほかにも同じような話は沢山あるのでしょうね。

伊賦夜神社の礼拝所内から見た本殿(同日撮影)

 無駄話になりますが、私はギリシアの主要都市などをぐるっと一周していますが、冥界の神ハーデスの神殿って見たことがありません。ハーデスと妻ペルセポネ、ケルベロスが並んだ像は博物館で見たことがありますが。神殿遺跡はどこかにあるのでしょうかね?冥界の神だから神殿は地上にはないのか?その性格上、人々からあまり祀られなかったのか?謎ですね。

 別にイザナミが「死者の国の女王」というわけではないのでしょうけど。仏教寺院とは違って、神社巡りではあまり感じない「死の国」や「死生観」というものを意識する旅となりました。

 ところで、島根県の「根」は、黄泉の国「根の堅洲国(かたすくに)」の「根」なのでしょうか???

黄泉の国から戻ったイザナギが住んだとされる地に建てられたとされる兵庫県淡路市の伊弉諾神宮(2019年6月14日撮影)

 一方で、イザナミの夫神であるイザナギの伊弉諾神宮へは5年後に初訪問。天気にも恵まれました。この時はバスで行ったので、中々時間がかかりました。

伊弉諾神宮の礼拝所(同日撮影)

 イザナギとイザナミの夫婦神の旅はこれでおしまい。次はアマテラス、スサノオ、ツクヨミの三貴子の地へと向かいます。

揖夜神社の地図↓

表紙の写真=伊賦夜神社(2014年3月22日撮影)


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