英語圏に住んだら子どもはどれくらいで英語がペラペラになりますか?
……という質問を受けることがある。
む……難しい。
なぜって、渡航時の子どもの年齢、それまでの英語経験、性格、渡航先の環境などなど……さまざまな要因が影響する話だからです。
……と答えると、ムスメがどうだったかを参考に知りたいと言われる。
なるほど……。
ムスメひとりの経験談でいいのであれば、ざっくり答えることができる。
(なぜ『ざっくり』なのかというと、細かいことは忘れているからです。)
☆
ムスメがニュージーランドに渡航したのは6歳11ヶ月の頃。
渡航前の英語歴は5年。1歳6ヶ月から週に1回、ネイティブの先生の英語教室に通っていた程度である。
その目的は『英語を身につける』よりも『週に1回だけでも外に出て人に会う機会を作る』だったので、5年経ってもムスメの自発的な発語は教室内だけ。教室の外では全く喋らなかった。
writingはアルファベットを書く練習程度。
それでもネイティブの先生による半年ごとのレベルチェックでは、英語の細かい音の聞き分けは出来ていたらしいし、英語の指示も理解出来ていたらしい。
……という英語レベルで渡航した。
性格については、当時のムスメは超がつくほどフレンドリーで、週に1回だけでも外に出て人に会う用事を作っておかないとずっと家にいるような母(私です。)に育てられてきたにもかかわらず、人見知りと物怖じは全くなかった。
(でも、ティーンになってからのムスメは用がないと家から出ません。動かざることジャバザハットのごとし。相変わらず人見知りと物怖じはしません。)
ニュージーランドの学校にも初日からご機嫌で通い、フレンドリーなKiwiをも驚かせるフレンドリーさを発揮していたムスメ。
渡航から3年ほど経った頃、ふと思いついて、ムスメに
「ニュージーランドに来た最初の頃って、英語はどれくらい分かった?」
と聞いてみたことがあるのだけれど、ムスメの返事は
「先生の指示はだいたい分かった。友達の英語はあんまり分からなかったけど、困らなかった」
……だった。
確かに困っているようには見えなかった。
ムスメの学校は他校の先生や教師経験のある保護者から「ジェントルな生徒が多い」とか「先生たちのクオリティが高い」と言われる環境だったので、その影響もあったと思う。
☆
ムスメは家族3人だけの時には英語を話したがらない子だったので、彼女の英語力の変化は主に学校の成績表と先生との面談で実感していた私である。
ただ、最初の年は在学期間が短かったので、略式の成績表だったし、面談も先生から「信じられないくらいクラスに馴染んでいます。ムスメ、仲のいいお友達の名前をママに教えてあげて」と言われたムスメがお友達の名前を列挙してくれた程度だったので、この時期にムスメの英語力がどれくらい伸びたのか実はよく分からない。
でも、1年で英語がペラペラになっていなかったことだけは確かで、「ムスメが英語らしきものを喋り始めたぞ」と感じ始めたのが1年目の終わりだった。
すると、英語らしきものを喋り始めたことによって、「困らなかった」ムスメもついに「困る」事態に直面することになった。
渡航から1年と3ヶ月が過ぎた頃、私は担任とESOLの先生の連名で呼び出された。(あの年の担任とESOLの先生は友人関係でもあったらしく、ムスメに関する情報の共有が(他の年よりも更に)しっかり出来ていたのです。)
なんでも自分の英語が友達に上手く伝わらなかったムスメが、教室で何度か泣いたらしい。
先生たちによると、ムスメの英語は正確さ云々よりも早口すぎるせいで上手く伝わっていないので、私たちからもムスメに「焦らず、ゆっくり喋っていいんだよ」と励まして欲しい……ということだった。
(ちなみにニュージーランド人の英語は世界最速と言われていて、アメリカ人の1.25倍の速度で喋っているそうです。そしてムスメは今でもYouTuberばりの早口英語です。結局直らなかったよ!ぎゃふん!)
先生たちの話は更に続き、
「ムスメの場合、歯並びのせいで英語の発音が難しい面もあるのですが、矯正する予定はありますか?」と言われ、私は、
「……いずれ。でも、今ではないです……」
と、しょんぼり答えたのだった。
(↓実際に矯正をスタートしたのは、3年ほど後からです。)
参考までに、この当時(渡航から1年と3ヶ月)のESOLの先生によるムスメの英語(speaking)の評価は以下のとおりだった。
☆How to speak with others
She speaks to others sometimes.
She speaks using her first language and English together.
☆What is spoken
She shows with a gesture and by speaking few words that she does not understand.
She speaking to others first.
She can retell main ideas from what she has read or heard.
☆How it is spoken
She is sometimes not able to pronounce words correctly.
☆ Responding to what is spoken
She sometimes does not speak.
She is able to follow an instruction and complete a task.
☆Language structure
She uses easy words but sentences are not always correct.
この1年半後(渡航から2年と9ヶ月)になると、先生からの評価に
She sometimes pauses when speaking but is fluent most of times.が加わるので、このあたりから英語がペラペラっぽく聞こえるようになったのではないかと思う。
(「〜っぽく聞こえる」と判断したのは、相変わらずShe uses easy words but sentences are not always correct.という評価も付いていたからです。)
ムスメが「彼女にはもうESOLは必要ありません」と言われたのは渡航から4年後だったと記憶している。
そして、渡航から5年が経った頃、新しい担任の先生との最初の面談で「ムスメはニュージーランドで生まれて育ったんですよね?」と聞かれたのだった。
担任の先生によると、ムスメの英語、特にwritingはクラスでも一二を争うレベルなので、そう思ったらしい。
え?その話、親は初耳ですけど?
(ムスメは他者からの評価を全く気にしないタイプなので、自分の描いた絵が学校のロビーに飾られていても、学年末になって絵を持ち帰って初めて「ロビーに貼ってあった」と事後報告するようなところがあります。教えて……マミィもダディも見に行くから!)
ムスメはこの翌年(渡航から6年経過)に受けたニュージーランドの習熟度テストのようなもので、writingが15-16歳レベルという判定(実年齢は13歳)だったり、ニュージーランド生活最後の1年だけ通ったセカンダリー・スクール(高校)の学年末のプライズ・ギビングでEnglishの優秀生徒に選ばれたりしていたので、ムスメの場合、英語がペラペラになるまでに4年、同世代のネイティブと遜色ない英語になるまでに5、6年ほど?ということになるだろうか。
ただし、日本語は同世代より幼いので、日々頑張っているところです(涙)。
何かを優先すると何かは犠牲になるよねぇ……。
ムスメの場合、今は学校で英語の古典作品を読まされたり、academic writingを書かされる機会がないので(その分、日本の古典や名作を読まされる機会はあるわけですが)、私が読み終わった「Emma」や「Northanger Abbey」を渡して読ませようとしたところ、数章で「ラブストーリーは好きじゃない」と却下された。
古典や名作はたいていラブストーリーじゃないかーい?
……と言ったら、
「『羅生門』は違うことない?」と反撃された。ぎゃふん。
以上がムスメの英語習得の(現在までの)道のりでした。(語学は母国語であっても、学ぶことはネバーエンディングストーリー……)