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バス停で待っているだけではバスはとまってくれない。

海外エピソードの定番に「日本とは違うバス(鉄道)事情」というジャンルがある。

ニュージーランド(オークランド)生活にももちろん独特のバス事情があるわけで、まずバス停で待っているだけではバスはとまってくれないのである。

じゃあ、どうすればいいのかと言えば、手を挙げてドライバーに合図をする。

迂闊にベンチで読書などしていると危険だ。乗りたいバスを逃してしまう。

合図の送り方にもコツがあって、バスのドライバーに「私はあなたの運転しているそのバスに乗りたい」と明確に伝えなくてはならない。

私とムスメがオークランドで初めて送った合図はニコニコと笑いながら顔の近くで手を振っただけだったので、ただのバス好き観光客の挨拶だと思われたらしく、ドライバーも笑顔で手を振り返して通り過ぎて行った

違うんじゃー!乗りたいんじゃー!!!

手を横にしっかり伸ばして合図しましょう……。

さて。
めでたくバスを止めることができて乗り込めたとしてもまだ安心はできない。

なぜなら、ニュージーランドのバスには基本的に車内アナウンスがない。(一部のリンクバスにはあるものの、いつも流れるとは限らない。)

車内アナウンスがないとどうなるか?ご存知だろうか?

降りたいバス停で降りるのが難しくなります。

だいたいこの辺か?と思って降車を知らせるブザーを鳴らしてみたら1つ手前のバス停で降りる羽目になったり(早すぎた)、それならばと次に乗ったときには慎重に押そうと思って待っていたら目的のバス停を通り越して次のバス停で降りることになる…。遅すぎた…。

電車でGoなみに停車(降車だけど)が難しいんじゃー!

ちなみに事前にドライバーに降りたい場所を知らせておいても、忘れられることがまあまあ発生するし、だいたいの思いつく対策はやっているのでアドバイスは気休めにしかなりません。しくしく。

さらに。予想外の事態は、バス停でも発生するので油断できない。

たいていのバス停には電光案内板があって、何番のバスが何分後に来るか表示されているのだが、順調に減っていた「あと何分」の数字が突然増えたりする

しかし、それはまだマシな方で、なぜかそのバス(の表示)自体が突然消えてしまうこともぼちぼち…いや、まあまあある。

私の乗るバス、どこ行ったん…?なんで消えてしまうん…?

そうかと思うと、表示にないバスがいつもと違う道から現れたりする。
おまえは路線バスじゃないのかーーー!

この「いつもと違う道から現れる路線バス」の謎が解けたのは、ニュージーランド生活が5年ほど過ぎた頃だった。

ある日、オットがいつもの路線バスに乗っていると、乗客が1人また1人と降りて、いつのまにか乗客はオット1人になっていた。

やがてドライバー(凛々しい女性)がオットに「ねえ、あなた。どこで降りるの?」と話しかけてきた。

「◯◯です」と答えるオット。ニュージーランドの人はフレンドリーなので、世間話でも始まるのだろうか?と思ったらしい。

しかし、そうではなかった。

彼女は、
「このバスねぇ、実は既にスケジュールから大きく遅れてるのよね。それであなたの降りるバス停のある道をショートカットしたいんだけど、手前の道のバス停で降りてもらっていい?」と、のたまったのだった。

フレンドリーを通り越して、ざっくばらん過ぎるぞ、ニュージーランド。

とはいえ、そのオファーは5分ほど余分に歩くだけで済む話だったので、オットは快く受け入れて途中下車したのだった。

なるほど…こうしていつもと違う道から現れるバスが誕生するんだな、と理解した次第である。

そして、これはあの「突然、電光案内板から消えるバス」の謎が解けた瞬間でもあった。

私が待っていたバス停、こうやってすっ飛ばされたんだな……。

他にもニュージーランドのバスの思い出は尽きない。

ある日、乗り込んだバスで誰かがスマホで音楽を流していた。
まあまあの音量である。
大胆な乗客もいるもんだ、ドライバーは注意しないのかな?と不思議に思っていたら、まさかのドライバー本人だった。
おまえかよ。

また、別のある日。
バスに乗っていると、途中のバス停でニュージーランド航空の客室乗務員の制服を着た女性が乗り込んできた。
あれ?これ飛行機でした?
一瞬、混乱したが、そこはニュージーランドなので驚くことではない。
人々は職場の制服仮装した姿でバスに乗ってくる。
ハロウィンの頃は「エルム街の悪夢」のフレディがバス待ちをしていた。
日本人が仮装するのと違って、人種的に説得力があるからまあまあ怖い。

またまた、ある日。
バスに乗っていると突然、バスが路肩に寄って停車した。
窓の外を見ると、電動の車椅子に乗った男性が歩道の段差で立ち往生している。
運転手は「ちょい待っててな」くらいの軽いアナウスをするとバスから降りて、その車椅子の男性が段差を乗り越えるのを手伝い始めた。
それを見た男性乗客も数人、降りて手伝う。
やがて、車椅子の男性は笑顔でその場を立ち去った。
運転手と乗客たちが車内に戻ると、バスは再び走り出した。何事もなかったように。

バスに乗るとその国らしさが見えてくる。
さすがに毎回、これらの出来事が起きるわけではないけれど、もし機会があれば、ニュージーランドでバスに乗ってみてほしい。

嗚呼、懐かしいなあ。ニュージーランドのバス生活。
金曜日の帰宅ラッシュは15時台、下手したら14時台から始まる国なので、子どもの下校(小学生から高校生までみんな15時に終わる)のお迎えラッシュと重なって、15分ごとに来るはずのバスをムスメと一緒に1時間くらい待ったよなあ。
あの頃はひたすら大変だったけど、なかなか贅沢な子育て期間だったと思う。











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