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【人と人の関係】イヤな同僚と職場(第3話)ハーモナイズ

今更ではありますが、登場人物と会社などを差し支えないようにご紹介します。物語は筆者である私がA氏や奥様から後々、少しずつ、少しずつ伺ったお話を回想する形で進んで行きます。

また、実話をもとに、物語風に記述しておりますので、表現上、目線が著者目線の時と登場人物目線の時が混在しており、プロの校正の目で読むと読みづらいかもしれません。そこはご容赦を。


1.登場人物

A氏(仮名)(44歳)
大学院(修士)卒業後、某株式会社に入社。全国に支社・支店を展開(業種は内緒)。キャリアの大部分が社内の人材教育関係。突然の転勤命令で、現在、とある地方自治体を主な取引先とするスタッフ約10名の小さな支店に異動。別に出世指向ではなかったが、今回の移動は降格人事かなと思っているみたい。でも身に覚え無し。趣味読書、クラッシック鑑賞。
A氏の妻(36歳)
結婚前は保育士として、東京郊外のある幼稚園に勤務。妊娠出産を機に、幼稚園および保護者達に惜しまれつつ退職。現在は子育てに専念しながら通信制大学に在籍し、子どもの早期発達支援について勉強中。
A氏の娘さん(小2女子8歳)
地元の小学校に通うが、たまに学校に行きづらく、家にいることもある。理解ある両親が心の支え。

B子さん(36歳)
米国大学留学、その後、現地のグローバル企業での勤務経験を買われて、中途採用で入社。規律もなにもあったもんじゃない。「公私混同」という言葉は、この人の辞書にはない。この人が言えばどんなことでも通ってしまう。
支店長(50歳男性)
B子さんに操られている?一言で言うと、「鼻毛を抜かれている」状態。支店のスタッフからの信頼皆無。

牧場オーナー(57歳)
この里山の牧場の創業者。馬との交流から生まれる癒やし、励まし、気づきなどの経験を、ホースハーモニーとして、一人でも多くの方に体験して頂き、幸せな日々のきっかけにして欲しい一心で、この事業を営んでいる。

他の登場人物は適宜、ご紹介します。

2.A氏とルーカスの絆作り(1回目)

朝、会社を休む旨、連絡の電話を入れたら、嫌なB子が電話に出てしまった。こんなことなら支店長の携帯に電話すれば良かったと後悔。
B子に一方的に昨日の書類のことを責められてしまったそうです。A氏は反論するのも面倒くさいので、「すまない。明日片付けるよ。」と言って電話を切りました。

電話を切ってから、ん?なんで私が「すまない」と言うんだ?それ逆だろ!
なんで、私が明日、片付けなきゃ行けないんだ? 自分でやれよ。
なんでB子は、私に彼女の尻拭いをすることが当然の様な物言いができるんだ?

A氏、段々と腹がたってきました。(このことは、随分後になってからA氏から伺ったお話です。)

職場の空気に心の底から嫌気がさしているA氏は、詳細は知らないが、夫の様子を心配している妻に半ば強引に誘われて、また里山に来ました。

娘と妻は昨日、ルーカス相手に絆を結ぶハーモナイズというプロセスを経験済み。(この記事を執筆していたころは、まだ適切な言葉が見つからず、ジョインアップと言ってました。)

「ハーモナイズ(harmonize)」とは、
ウマとヒトのイニシャルコンタクト(一番最初の出会い)で、相互の生涯の絆が確立するほどの調和が成立する瞬間のこと。
ウマはヒトとのこの瞬間を終生忘れません。
何年ぶりに再会しても、そのヒトのことをすぐに思い出します。

※「ハーモナイズ(harmonize)」の用語は、長年、この瞬間のことをきちんと言語化できなかった私に、2023年夏、ホースハーモニー体験をされた横浜国立大学の言語学者の先生が提案して下さいました。

ホースハーモニー読本:「ヒトとウマの絆作り」より抜粋

二人が馬場のゲート前に立つと、ルーカスが馬場の隅っこの方から静かに二人に向かって歩いてきます。
二人が馬場に入ると、ルーカスは深く頭を下げて、二人の前で立ち止まり、穏やかな目をして二人と一緒に立っています。

妻と娘は昨日ルーカスと絆を結んだと言ってたけれど、もう何年も一緒にいるかのような和やかな雰囲気に、Aさん正直、驚きました。
娘さんはニコニコしてルーカスのそばにいる。
ルーカスは奥さんの匂いを嗅ぐように鼻を押しつけてきて、奥さん大はしゃぎ。
A氏(心の声):「なんだこの光景は。まだ1日しか経っていないだろう。まるで何年もの付き合いの様な感じじゃないか。なにがあったんだ昨日。」

はじめてここを訪れた日に、白いポロシャツを着ていた男性、
実はここのオーナー。
「昨日は奥様も娘さんも、ルーカスと絆を結んで行かれました。二日連続でいらっしゃるとは、よほどルーカスとの絆作りの1ページ目が心に染みたのでしょうね。昨夜、明日主人のハーモナイズもお願いしますと、奥様からメールをいただきました。」

A氏:「先日は突然伺ったのにお相手して頂いて、ありがとうございました。妻も娘も喜んでおりました。今日は宜しくお願いいたします。」

気がつくと、奥さんも娘さんもそばに来ていて、これからのA氏とルーカスのハーモナイズを馬場の外で興味津々で見ています。

A氏はオーナーから一通り、ハーモナイズのプロセスについてレクチャーを受け、いよいは馬場の中央へ。馬場ではルーカスとA氏の二人きり。

ハーモナイズの際、あくまでも、人が自分自身とルーカスとの心の絆を結ぶことが目的ですから、オーナーも馬場には入りません。二人きりにします。アドバイスはゲートの外からします。

馬場の真ん中で、A氏は一生懸命に教わった呼吸法でルーカスに向き合いますが、ルーカスはA氏に全く反応を示さずにぼーっと立っています。
まるで動きません。微動だにせず。

娘さんは健気に、「パパがんばれー!」と応援しますが、その声はむなしく響き、奥様は目に涙を溜めています。
妻と娘の切実な目線は、やがて悲壮感さえ感じられます。30分経過したところでオーナーが、「Aさん、一休みしましょう。」と声をかけ、馬の洗い場でコーヒーを飲みながら振り返りをします。

オーナーの奥さんが気を利かして、A氏の奥さんと娘さんを誘い、タロウとルーカスにあげる青草を刈りに行きました。。
オーナーとA氏が静かに、お話できる環境を整えてくれました。

A氏 :「馬は人を見抜くというけど、僕は馬には好かれないのでしょうか。妻と娘の様子を見ていたので、僕もあんな風に仲良くなれると思っていたのですが。」

オーナー:「ホースハーモニーでは、『馬が人を見抜く』という考え方はしないんですよ。」

A氏 :「・・・」(言葉の意味を考えているようです。)
   「では、どのように考えるのですか?」

オーナー:「ホースハーモニーでは、馬が人を見抜くというよりも、人が『馬にすべてを見せている。』というふうに考えます。」

人の匂い、身体の内部の音、微細表情、姿勢、動作。これらはすべて「心の現れ」である。だから馬に隠し事をするのは非常に困難。

ホースハーモニー読本(©葉山ハーモニーガーデン)

オーナー:「ルーカスがAさんのもとに来なかったのは、おそらくAさんの心がルーカスに来るなと言っていたからです。
例えばルーカスは体重500Kgあります。大きいと感じませんでしたか? そんな大きな生き物と馬場で二人きりにされて緊張しませんでしたか?」

A氏 :「! 確かに緊張していました。内心怖かったです。急に走って向かってきたらどうしようとか考えていました。」

オーナー:「Aさんはその恐怖心にどのように向き合いましたか?」

A氏 :「実は、妻と娘の前ではかっこよく決めたいと思って、虚勢を張っていました。怖さを飲み込んで、否定したって言うか、無視したというか。」

オーナー:「ありがとうございます。ご自分の心をそうやって正直におっしゃることができるあなたはとても誠実な人です。じゃぁ、タバコでも吸ってリラックスしてもう一度やってみましょうか。(^^)」


4.3 イヤな同僚と職場(第1話)ストレス
4.4 イヤな同僚と職場(第2話)里山での出会い
4.6 イヤな同僚と職場(第4話) ハーモナイズ2度目のチャレンジ
4.7 イヤな同僚と職場(第5話 最終回) 馬と絆を結ぶ

目次:馬に訊いてみよう!

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