『　ぬくうなったバイ！　』（東彼杵郡・東彼杵町）

「寒うなかね？」

「だいじょうぶ、父ちゃんのジャンパーば着たら、ぬくうなったばい」

「そうや、そんジャンパーは父ちゃんの仕事用やっけんが、あったかかやろうが」

「うん。ばってん、父ちゃんは寒うなかとね？」

「ん･･･？　父ちゃんは寒うなか。いつも、きたえとっけんね。こんぐらいは、どがんちゃなかと！」

「そいばってん、さっきから、くしゃみばっかりしよるたい」

「うんにゃ。こいは、ちがう。風の強かけん、ほこりの入りよるとさ」

「ふ～ん」

「ま、とにかく早う、うちに帰ろうや。そいで、あったかいフロでん入ろうで」

◇

昔の生活は基本、「歩き」で、どこへ行くのも自分の足がたよりだった。

そのため、自転車やバイクといった乗り物は、大変ありがたいものだった。

ある幼いころの夏の日。うちの父が私をバイクの後ろに乗せて、いなか道を走っていた。

とても暑い日だったので、父は道ばたにある商店でバイクをとめ、子ども用の麦わら帽を買ってくれた。

そまつな物だったが、それがとてもうれしくて、その後ずっと、その帽子を大事にしていたのを覚えている。

今、うちの子もなぜか、車よりも自転車に乗る方をよろこぶ。

まさか、「オヤジのせなかを見ている」わけではあるまいが、ふしぎなものだ。

長崎はどこでも坂が多くて、登りではヘトヘトになることもあるが、犬を散歩中の方や、お年寄りの方の顔なじみが増えるなど、楽しいことも多い。

子は育ちつつ、親はおとろえつつ･･･。こうして走れるのも、もうそんなに長い間ではないのだろうが･･･。

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