オリオン座

オリオン座しか、分からない

夜空を見上げると、オリオン座が浮かんでいる。
7つのまばゆい光は、相変わらず印象的な形を成していた。
小学生以来、僕にとって星座の代表格だ。

代表格といっても、他の星座に比べて何か優れているわけではない。
オリオン座しか知らないから。

僕にとっての夜空は、オリオン座だけの世界なのだ。



その分野についての情報が不足しているときに、いくつもの条件付きで成立する不完全な答えを出してしまうことがある。
(平成くん、さようなら/p53)

こんな一節があった。
言われてみればその通りだ。

最近起きている世間の話題は、この一節に落ち着くことが多い。

発言が相応しくなかったとか、品性にかけているとか。

批判される側の認知が偏っていたかもしれない。
ただ、批判した側も認知が偏っていたかもしれない。

本当のところは分からない。
だけど、どこかの知識とか経験が足りていれば起こらなかったかもしれない。
そう思わざるを得ないことが往々にしてある。


“無知の知”というソクラテスの言葉がある。
自分は何も知らない、ということを知ること。

「自分はある程度のことは知っている」

そう言う人もいる。
だけど、無知だと知っていないと、分からないこともあるのだ。

禅問答みたいだけど。



自分が見たいものを見る傾向は、誰にも少なからずあると思う。

自分の考えに合うものに触れるのは、心地よいからだ。

あるいは、自分の人生を否定するような事実を見るのはつらいことだし、悲しい気分になるから。

僕だって否定されるのは嫌だ。
不快な事実を目の当たりにしたとき、胸の辺りがキュッと締め付けられる。
本当に嫌だ。

でも、それを乗り越えた時、自分の中に妙な感情が湧いてくる。

あ、自分って大したことないな。

一言でいうなら、諦め。
だけど、それは"積極的な諦め"なのだ。

大したことない自分の中に、残ったものは何か?

それを探っていけば、いつも何かが見えてくる。
ソクラテス風に言うなら、"自分の知"。(ソクラテス、ごめんなさい)

無知な事も知っている。
自分の程度も知っている。

そういう人に、なってみたい。


僕にとってのオリオン座はすごくちっぽけだ。

星座の勉強をしていれば、もっと素敵な星座に出逢えただろう。
季節の変化に敏感になって、夜空の移り変わりに胸をときめかせていただろう。

そんなことを思いながら、ただ唯一知っている星座を眺める僕。

もし夜空に浮かぶ全ての星座を言い当てることができたとしたら、どうか。
僕は、何を思うだろう。

やっぱ、オリオン座っていいよね。

何もかも知った上で、オリオン座が好き。

そう思えるなら、それはまた素敵なことなのだ。


p.s.
先日、初めてのサポート頂きました。
使い道についてはまた後日、noteで報告させて頂きます。
ありがとうございました!!

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