おとなは、数字が好きだから
おとなは数字が好きだから。
新しい友達のことを話しても、
おとなは、いちばんたいせつなことはなにも聞かない。
(星の王子さま p23)
僕は、大人になった。
相手に分かりやすく伝えようとして、数字を引き合いに出すたびに思う。
自分はそういう文脈の中に生きているんだ、と。
良いことなのか、悪いことなのかは、まだよく分からない。
そんな風に変わってしまうのは仕方ないと思う部分もある。
星の王子さまには申し訳ないけど。
でも、数字の無い世界に一度身を置いてみたくもある。
学生の内は、まだガツガツとした数字の世界ではない。
だから、そういう世界に近いのかもしれない。
だけど、もし存在するとしたら、その世界は幸せなのだろうか。
それもよく分からない。
今いるこの世界が不完全なのか、と聞かれても、それもよく分からない。
大人になったけど、分からないことだらけなのだ。
〇
大人になったけど、忘れてはいけないことも心得ているつもり。
数字よりもたいせつなことがある
数字はとても情報量が少ないから。
何歳?
何人きょうだい?
体重は何キロ?
おとうさんの収入は?
(星の王子さま p23)
きっと大切なことは数字じゃなくて、もっと奥行きのあるものなんだと思う。
年齢が分かれば、統計的にどういう考え方をしてるのか分かるかもしれない。
きょうだい構成が分かれば、おおよその性格が予測できるかもしれない。
いわゆる「世代論」とか「きょうだい論?」のこと。
だけど、人付き合いはうわべの理論では語り切れない。
思い出を聞く。
悩んできたことを教えてもらう。
肌に合う文体について一緒に語る。
そんな話をした後では、数字の持つパワーはあまりにも小さく思えてしまう。
チョコエッグってお菓子、昔よく食べてた。
中に食玩が入ってるやつ。
数字って、周りのチョコの殻のようなものだ。
本当に大切なもの、食玩は、その殻をどけたところにある。
このたとえは、ちょっと子どもっぽい。
数字は確かに必要なんだけど、それだけじゃ物足りない。
本当に大切な物に辿り着くには、厚さ10cmくらいのチョコの殻を掘り進めないといけないんだと思う。
そこは数字で表現するのか、というツッコミが聞こえてくる。
だって、その方が分かりやすいから。
〇
星の王子さまの有名なことば。
とてもかんたんなことだ。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない。
(星の王子さま p108)
いちばんたいせつなことは、目に見えない。
分かってる、と言いたいけど、そんな簡単には言えない。
今は、心がけることしかできない。
本当にたいせつなものが、目に見えなくなるまで。
とりあえず、もう一回読み直す。
捉えきれなかった大切なことばを、もう一度探すために。