ここにいないあなたへ。(「映画ドラえもん のび太の宝島」を観て)
脚本は川村元気さん、主題歌は星野源さん、ゲスト声優に大泉洋さん、長澤まさみさんという、成功を期した布陣で固められた本作。
「宝探し」という某アニメーションのメインテーマも想起しつつ、「エヴァンゲリオン」の影響も感じるプロダクション・デザインがあったり。でも実際は、ドラえもん映画らしい「愛」に満ちた物語でした。
「映画ドラえもん のび太の宝島」
(監督:今井一暁、2018年)
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物語は、「宝島を探してみせる!」というのび太の無茶な宣言から始まる。「現代に宝島なんてどこにもない」と出来杉に示唆されるも、ドラえもんの力を借りて宝島探しの旅に出ることに。
序盤は、未来から訪ねてきた時空海賊との戦いから。ひみつ道具で応戦するも、しずかが拐われてしまう。(海賊の悪意ではなく、ただの人違いだったわけだけど)
時空海賊とは何者なのか、何が目的で現代に出現したのか。時空海賊側の人物たちもけっこう「良い人」たちばかりで、意外にも謎が深まるばかり。だが、何も知らないドラえもんたちは、しずかを救出しようと時空海賊の居場所を突き詰めようと奔走する。
あらすじはすっ飛ばすが、最終的には、
・ドラえもんチーム(ドラえもんたち、時空海賊にいたフロックとセーラ)
・キャプテンシルバー
という対決になる。フロックとセーラはキャプテンシルバーの息子、娘であり、「なるほど、これは親子の対話もテーマのひとつなんだ」と気付く。実は冒頭、「宝島を探す」と発言していたのび太を、父親が諌めるシーンがあった。冒険心を持つ息子と、現実(宿題)に向き合うよう注意する父親。この伏線には、さすが脚本家・川村元気さんの技巧が光っていた。
キャプテンシルバーが目論む、地球エネルギーを略奪した上での新たな星への移住計画。しかしその話の筋とは別に、親子の「分かり合えない」関係性に一石を投じたいという作り手の意図があった。
それは、クライマックスシーンで流れる星野源さんの挿入歌「ここにいないあなたへ」の歌詞でも表現されている。
本作では、急逝してしまったフロックとセーラの母(つまりキャプテンシルバーの妻)であるフィオナが「ここにいないあなた」という描かれ方をしている。
しかし実際には、物理的に、あるいは精神的に離れてしまっている親(あるいは子ども)に対する不在を思う気持ちが込められているのだろう。
「離れてしまっている」と書いたが、それは決して悪いことばかりではない。「可愛い子には旅をさせよ」という言葉がある通り、「ここにいないあなた」であることがプラスに働くこともあるわけで。
そんな「あなた」に対する無事を祈っている歌詞が、静かに胸を打つのだ。
あなたにとっての「あなた」を思い出すような、愛おしく感じるような、そんな作品だったように思う。
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週末ということで、5歳と3歳の息子と一緒に鑑賞。
次男はコメディシーンでゲラゲラ笑っていましたが、長男はクライマックスで涙するなど、ドラえもん映画の世界観を楽しんでいました。
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