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なぜ事業をしているのか(Netflix配信ドラマ「梨泰院クラス」を観て)

2020年に話題になり、今なお韓国ドラマの代表作となっている「梨泰院クラス」。2020年夏秋に観ていたのだけど、途中で観れなくなっていたが、ようやく全話を鑑賞することができた。

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日本では、日本でヒットした「半沢直樹」シリーズの韓国版と称されることもある。だが面白さという意味では、梨泰院クラスの方が断然上だと言えるだろう。

面白さとは個人差があるので一概には言えないけれど、

・ビジネスの解像度が「梨泰院クラス」の方が高い
・「なぜ事業をしているのか」の問いが物語にスッと入ってくる
・主人公のパク・セロイのリーダーシップ
・上記3点が、一部地域にローカライズせずに世界共通の面白いポイントになっている
・それに加えて、徹底的に「勧善懲悪」に徹している潔さがある

他にも、韓国のカルチャーを垣間見れるのも楽しい。

またトランスジェンダーをめぐるやりとりも生々しく描かれている。それらの描写がすべて現在の韓国社会に即しているのかは分からないが、様々な社会課題にも向き合っているのは事実で、製作陣が「世界で評価されたい」と明確に狙っていた作品だったと言えるのではないか。

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上述したポイントをそれぞれ詳述することはしないが、ビジネスの解像度の高さについてのみ補足したい。

例えば作品内で描かれていた、株主の委任状を争うプロキシーファイト。トラブルに乗じて、経営陣の退任を迫ろうと大株主が画策するのは常套手段だが、それを丁寧かつスリリングに描いていたのは見事だった。

何より僕が評価したいのは、現実的であること。実際のビジネスでも主導権を奪うためには、きっちりと株や議決権を獲得することが必須なわけで。「半沢直樹」の場合、不正や不正や賄賂などの犯罪行為を暴くことによって経営責任を問うというような形になっているが、これはいささか現実離れした感がある。コンプライアンス遵守はもちろん大切だけど、ビジネスというルールに即しているかどうかという点で、「梨泰院クラス」はその辺りをドラマティックかつ現実的に描いているように僕は感じた。

主人公のセロイも、最終話で「僕は商売人だ」と宣言している。「梨泰院クラス」の喧嘩が、ビジネスルールに基づいたものだったと象徴するシーンになっていた。

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セロイの宿敵である、長家グループのデヒ会長。

経営危機に際して、彼がずっと懇意にしてきた投資家を頼るが、投資家に「家族に十分食べさせたくて長家を作った。今も志は同じかい?」と問われてしまう。

デヒは「もちろんだ」と即答するが、投資家が放った言葉は手厳しい。「だったら経営権を手放し、宿敵のセロイに任せるべき」だと告げる。

それが最善であれば、会社を潰さずに、家族や従業員の生活を守ることができるからだ。言葉に詰まったデヒは「私が損をさせたことはないはずです」と話をズラす。当初の事業目的を忘れてしまったことが明白になった瞬間だ。

これは多くのビジネスパーソンにとっても見覚えのあるもので。「なぜ仕事をしているのか」に繋がる普遍的な問いとも繋がるだろう。

「梨泰院クラス」は、厳密に言えば経済ドラマではない。それでも寂れた居酒屋がいかに成功を収めていくかという成長物語は、実にマーケティングの基本に忠実で、「ああ、こうやって商売って成り立っていくんだよな」とつい感心してしまった。(Instagramやインフルエンサーを使ったプロモーションは、2010年代らしい内容だ。もしこれが2022年のドラマだったとしたら、間違いなくTikTokなどの動画マーケティングが登場するだろう)

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後は、とにかくスタッフとキャストが一丸となって、「歴史に残る大作を作ろう」という野心が見えて。それがとても良かった。

恋愛も、若者の成長物語も、勧善懲悪も、サスペンスも全部を混ぜにしている。

全話一気に観るとお腹いっぱいになってしまうだろうけど、「どのシーンも見所にしてやろう」と意欲的に制作されているのは素晴らしいことだと思う。「韓国ドラマのお薦めは?」と問われたら、「ちょっとベタだけど」と言い訳しつつ、本作を挙げてしまいそうな気がします。

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パク・ソジュンさんが演じる主人公のセロイ。

彼が自分の頭に触れるシーンが随所にあるのだが、あれって意味があるのだろうか。再び観直す気力はないけれど、詳しい考察ができる人がいれば教えてほしいです。

(Netflixで観ました)

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