試験を「実施する / しない」だけでない第3の選択肢を。
リモート試験は課題も多いですが、完全性が担保されることで様々なメリットを享受できる施策だと思います。「試験監督システム」という言葉も初めて知りましたが、アメリカではその分野でも競争が発生しているほど、既にマーケットになっているのですね。
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自宅からリモートで試験を受けることを可能にする「試験監督システム」は、インストール型のソフトウェアであることが多い。
ウェブカメラやマイク使用の許可を要請され、試験中に不正がないか監視することで、リモート試験(オンライン試験)の公平性を担保できるというものだ。Proctorio社、ExamSoft社、ProctorU社がプロバイダーとしてシェアが高い。
批判されているのは、システムの完全性が低い点だ。
・肌の色が濃い人
・宗教的なかぶり物をしている人
・インターネット環境が十分でない人(低所得地域であることが多い)
他にもプライバシーや運営側の差別による懸念から、システム使用中止を呼び掛ける声が、国会議員を巻き込みながら大きくなっている。
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個人的には、物理的な制約から解放できるリモート試験はメリットも多いと感じている。
僕は北海道大学を受験したのだが、受験まではなかなか難儀だった。地元の栃木県から空路で移動しなければならなかったのだが、やはり身体的にも精神的にも負担は大きかった。降雪のことを心配して2日前から現地入りしたのだが、慣れない土地で普段と同じように生活することは難しかったのを憶えている。(当然、移動や滞在に関する費用は受験者持ちだ)
よく試験の場合「公平性」という点が議論に挙がる。
確かに同じ場所にいることで、同じ条件で試験に臨むことができる(運営側が直接管理できる)が、その前後にかかる負担に関する公平性は無視されていることが殆どだと言わざるを得ない。
技術が進展すれば、その過程で前述した懸念もセットで発生するのは常のこと。1つ1つ解決していくことで世間の理解も得られると思うし、ぜひ試験のプロバイダーは、いまいちど「公平性とは何か?」に立ち返りつつ、リモート試験の有用性について考えていただきたい。
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緊急事態宣言発令中の栃木県では、宇都宮大学が2, 3月の個別試験の中止が発表された。受験生が受験大学を決める段階のため、1日も早い決断が必要になる中、止むを得ない判断だったと思う。
それに関して、文科省の「牽制」も分からないではないが、僕が感じるのは「実施する / 実施しない」という選択肢だけでは限界があるのでは?ということだ。リモートで実施するという選択肢を提示することで、こういった緊急時のリスクをそれなりに回避することができるのではないか。
試験を冬に実施することで、感染系の病気に罹患するリスクは高まる。移動を伴えば尚更だ。(人生がかかっているので、多少ツライ状況でも何とか試験を受けようとするだろう)
よりポジティブな言い方をすると、物理的制約から解放されれば、受け入れる人たちは国も地域も超えていく、つまり間口が広くなるということだ。日本の大学受験は特殊な性格なので国内マーケットに限定されるかもしれないが、試験を通じて「多様性の高い人たちを集めたい」と求めることもある。試験という「ふるい落とす」という性格を考えると不向きかもしれないが、いずれにせよ「そもそもどんな人たちを集めたいんだっけ?」「どんな人に試験を受けてもらいたいんだっけ?」と考えてみるのは必要だ。
試験実施における第3の選択肢「リモート試験」の可能性を、改めて、もう一度考えていただきたい。「そもそもテストって何で必要?」「公平性って何?」という本質を考える機会になるはずだから。