猫が描かれるとき、女性を伴うケースが多い
昨夜、こんなエッセイを公開した。
目黒区美術館で開催されていた「東京の猫たち」という企画展。
僕は残念ながら、ペット愛が希薄だ。ペット愛好家の皆さんの気持ちがいまいち分かりかねており、長らく続いているペットブームに置き去りにされている感がある。
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だが、企画展はとても楽しかった。
特に、解説として書かれていた文章が興味深かった。
いわく「猫が描かれるとき女性を伴うケースが多い」とのこと。
・猫は女性的、犬は男性的というイメージがあった
・猫のしなやかな肉体と、女性のそれが重なる部分がある
・かつて画家が男性中心の時代だったとき、他者であり未知の存在である女性が、「何を考えているのか分からない」神秘的な生き物である猫となぞらえられていた
・シンプルに、画家にとって、美しい女性と猫は、ともに描きたいモチーフだった
そんなことが列記されていた。なるほど、と思わず膝を打った。
これらの解説によって、眼前の猫たちの絵に、新しい解釈を加えることができたのが純粋に嬉しい。
そして、絵の見方を学んだことは、もっと大きい喜びだ。「何が描かれているのか」「なぜ、それが描かれているのか(=なぜ、それが描かれていないのか)」を知ることは、画家の意図に近接すること。メタな気付きとも言える。
考えてみれば、美術作品には、広く描かれているモチーフがたくさんある。
静物画としての果物、裸婦、海、自画像……
「そういえば自画像って、何のために描かれるんだろう?」
そんな問いを持てれば、作品への向き合い方や、美術館での振る舞いも変わるはずだ。
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「東京の猫たち」の展示作品は、どれも猫が魅力的だった。
眠っている猫、威嚇している猫、驚いている中、ねずみを加えた猫、飼い主にぴったりと寄り添っている猫……
藤田嗣治や熊谷守一などの作品も展示されている。ぜひ、猫好きな方は訪ねてみてほしい。