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難民・移民に関する映画 #世界難民の日

毎年6月20日は #世界難民の日 だ。

日付が変わってしまったが、世界各地で連帯の意思が表明された。青色の絵や写真などが数多くアップされ、難民の保護や支援への願いが集う。

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おすすめの映画を紹介する前に、まずは日本における難民認定の課題について。

名古屋出入国在留管理局の施設で亡くなった、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんへの非人道的な対応が問題視された。

いわゆる「入管」の問題と並行して、関心が高まっているのが、日本における難民認定の少なさだ。

2021年は、2,413人が難民申請を行い、認定されたのは74人でした。各国の置かれた状況は違うため単純比較はできませんが、世界でも類を見ない極めて少ない認定数であることは事実です。例えば、シリア難民の認定率(2020年)は、ドイツでは78%、アメリカでは62%、オーストラリアでは89%ですが、日本では、2011年から2020年の間で117人が申請したところ、認められた人は22人(※ 決定数に対して22%)に留まっています。

(認定NPO法人難民支援協会ホームページ「日本の難民認定はなぜ少ないか?-制度面の課題から」より引用)

もちろん社会における合意形成は欠かせない。受け入れ態勢のない状態で受け入れを進めたとしても、当事者たちが苦しむだけ。

しかし認定NPO法人難民支援協会のホームページでも書かれている通り、難民の問題は「人の命を救う」というシンプルなもののはずだ。認定されず、母国に強制送還されることによって命の危険が脅かされてしまう。

日本なら安全だろう」と思って駆け込んだ人たちが、仕組みの問題で裏切られてしまう。

難民や移民の問題は、国益や国同士の関係性など、政治的イシューを超えて議論されなくてはならないものだ。国際社会では何周も先回りして議論が進行している。議論すらしっかり行なわれない状況を、日本人のひとりとして情けなく思う。一刻も早く、法整備や国民の理解が深まっていくことを期待したい。

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ということで、難民・移民に関する映画を4本紹介する。

ミッドナイト・トラベラー(劇場公開日 2021年9月11日)

タリバン政権から死刑宣告を受けた、映像作家のハッサン・ファジリさん。家族を守るために、アフガニスタンからヨーロッパまで5,600kmの道のりを、3台のスマートフォンで撮影しながら移動した。

なかなか難民保護を受けられなかったり、狭い住居空間で隔離されたり、差別的なヘイトスピーチに晒されたり。行く先々で、大きな苦労を味わい続けるファジリ家。

難民になるとは、どういうことか?」が理解できる作品であると同時に、ファジリ家の家族としての繋がりに希望を感じる。このような希望が、当事者任せで完結されないような社会になってほしい。

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FLEE(劇場公開日 2022年6月10日)

アフガニスタンを離れた青年の話で、全編にわたりアニメーションで作られている。アニメーションであることで、逆に生々しく描かれるシーンに鳥肌が立つ。とりわけ、滞在先のロシアや密航中の船舶内での様子は、どちらも悲しく、どこまでも陰惨だ。

主人公のアミンは、自身の経験や性的指向のことをなかなか語らない。長年の友人であるインタビュアー(本作の監督だ)にも隠していたことがある。家族に対して実害を招きかねないことであり、「難民」という立ち位置が不安定であることを意味している。(実際に滞在先のロシアでは、何度も警官から暴力や恫喝を受けている)

英題である“FLEE”とは、「危険や災害、追跡者などから(安全な場所へ)逃げる」という意味。だが問われているのは、彼らにとって安全な場所とはどこだろう?ということ。生まれた場所が違うだけで、こんなにも生きるのが苦しいなんて。非当事者であるマジョリティは、どのようにこの問題に向き合うべきなのだろうか。

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マイスモールランド(劇場公開日 2022年5月6日)

監督を務めた川和田恵真さんは、是枝裕和さんの映画制作にも携わってきた。本作が監督としてのデビュー作になる。

そもそも難民や移民に関する作品は、ドキュメンタリーであることが多い。当事者が体験してきたことがもともと強烈であり、あえてフィクションにする必要がないからだ。だが「マイスモールランド」を観ると、フィクションはフィクションとして語れる物語があると痛感する。

在日クルド人の少女・サーリャ(演・嵐莉菜さん)が、ある日突然、在留資格を失うことに。教師を夢見て大学進学を目指すも、受験できる状況ではなくなる。それどころか移動・就労が制限され、まともに生計を立てることすら困難になってしまう。チョーラク一家の家族の絆は、とても他人事として看過できるものではない

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スープとイデオロギー(劇場公開日 2022年6月11日)

こちらは難民・移民がテーマとは異なるのだが、素晴らしいドキュメンタリーなので紹介したい。「かぞくのくに」で知られる在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ監督が最新作で描くのは、自身の年老いた母(オモニ)だ。

1959年から約20年にわたり行なわれてきた、北朝鮮への集団移住。いわゆる「帰国事業」と呼ばれるものだが、ヨンヒさんの両親は、実の息子である兄3人を北朝鮮へと向かわせた。当然のことながら彼らは苦境に苦しむわけだが、オモニはそれでも韓国を忌避し、北朝鮮への支持を続けている。その理由は、済州島で経験した4.3事件にあった。

移動が制限されるというのは、かくも悲しく不合理なものなのか。フィクションである「かぞくのくに」とも重なり、彼らが常に抱えている心痛に吐きそうになる。「描くことがある」監督の、描かれるべきして生まれた素晴らしいドキュメンタリーだ。

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どの作品も、この1年以内で劇場公開されたもの。

「FLEE」と「スープとイデオロギー」は、今月公開のものなので、ぜひ近くの映画館に足を運んでほしい。(地域によって上映されていない場合もあります)

映画を観ただけで、難民や移民の問題に「分かったフリ」をするのは危険だ。だけど、まずは「分かったフリ」から始めるしかない。

ぜひそれぞれの作品を観た方は、コメントだったりTwitterのDMだったりに感想を送ってもらえたらと思う。ぜひ、いろいろ議論しましょう。

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ほりそう / 堀 聡太
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