本当に熱くて、激しいのは。(映画「BLUE GIANT」を観て)
しばらく余韻に浸りたいという思いと、初期衝動をメモに残したいという思いが葛藤しつつ、気の向くままに感想を綴ってみる。
主人公かっこよすぎ問題や、ドラム経験2年弱ではさすがにBLUE NOTE TOKYO(映画では「So Blue Tokyo」)に出演できないだろ……的なことを突っ込むのは野暮なわけで。ひたすら情熱を描く2時間は、やっぱり心が疼きっぱなしだった。
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雪祈が玉田のプレイに感服する
ピアノを14年やってきた雪祈にとって、ドラムをやったことのない人間がバンドに入ってくるのは信じ難いことだっただろう。実際、玉田はライブ中もソロを任せられず、玉田への雪祈の評価も「ミスをどれだけ防げたか」というものだった。
内容の言及は避けるが、終盤、玉田のプレイを見て雪祈がハッとした顔をする。その顔は「やるな、玉田」という感じだった。
その直前でも玉田は観客を魅了していたのだが、雪祈は見ていない。だから劇中においては、雪祈が玉田を認めた最初で最後の瞬間で、それがちゃんと描かれている。涙せずにはいられない場面だ。
「BLUE GIANT」はプレイヤーだけの物語ではない
「THE FIRST SLAM DUNK」は、高校生の物語だ。映画では安西監督の回想シーンも描かれず、ただひたすらに若者たちの青春を描いている。
だが「BLUE GIANT」の前提は、「ジャズが聴かれなくなっている」ということ。そういう場面は、振り返ってみるとたくさんある。雪祈が「あんなオッサンたちがジャズを演奏しているなんて、無意味だ」ということを言い放つが、それはある意味で正論である。ポピュラーミュージックもロックも、日がな新しいアーティストが出現する。それに比べると、ジャズの新陳代謝は緩やかなように思える。
「So Blue Tokyo」の支配人・平も、あるとき「『一流に手が届くかどうか』という人間にチャンスを与えているのか」と葛藤する。
日本におけるジャズの聖地。東京という土地柄もあり、黙っていてもアーティストは寄ってくる。それをブッキングする側の人間にとって、ジャズの新陳代謝を促すような、新しいアーティストを発掘するような試みができているのか。
そんな「大人」の視点も、さりげなく走っていたのが印象的だった。
ジャズで生計を立てるのは大変だ
雪祈は、海外ジャズバンドのピアニストの代役として舞台に立つ。そこでしっかりとパフォーマンスを発揮し、「新星」として評価されるようになった。
だが、それなりに有名になっても、真夜中の工事現場のアルバイトに臨んでいる。金がかかるのだ。
このことも、幼少期に夜逃げした女友達を指して「彼女がピアノを続けられているわけがない」といっていたのが伏線にもなっていた。
生活するに足るだけの収入(彼らにとっては「仕送り」)では、ジャズを続けていくことはできない。
肉体労働のように、キツいけどお金が入ってくるようなアルバイトを並行して臨まないと、プレイし続けることはできない。(裕福なプレイヤーは別だけど、JASSのメンバーはそうではなかった)
だからこの映画は、「映画だけじゃなく、ジャズのライブにも行ってくださいね」というメッセージが込められているんだと思う。
僕も、ジャズに触れようとして何度も挫折してきた。これを機にまた聴き直したいし、久しぶりに「BLUE NOTE」にも足を運びたい。
映画の熱さと激しさは、間違いなく、現場でしか体験できないのだから。
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