何があっても、どんなときでも、私たちは美しい。(映画「カラーパープル」を観て)
父や夫から暴力を受け、辛苦を味わいながら「奴隷」のような日々を送っていたセリー。
彼女が型破りな生き方を体現する女性たちと出会い、交流することで、自分らしさを取り戻していく物語だ。
「カラーパープル」
(監督:ブリッツ・バザウーレ、2023年)
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前情報なく、映画を鑑賞して30分ほど、恥ずかしながら気付かなかったことがある。
「主人公、だれ???」
まあ別に主人公が映画の出来を決めるわけでもないので、別に誰だって構わないのだけど、まさかセリー(演:ファンテイジア・バリーノ)が主役だとは思わなかった。
物語の最初から登場していたにも関わらず、セリーが主演だと思えなかったのは、セリーがとても地味で後ろ向きな少女として描かれていたから。妹役にはディズニーアニメ「リトル・マーメイド」の主演だったハリー・ベイリーが起用されていて、むしろ彼女を中心とした物語になると思い込んでいたのだ。
・自分の意見が言えない
・自分の容姿に自信がない
・自分の強みが分からない
・(その上)周囲の男性から蔑まれて生きてきた
そんな負の連鎖がセリーの人生を萎縮させていて。1900年代初頭、男女差別や黒人差別が公然となされてきた時代において、理不尽な扱いを強いられてきた黒人女性たち。そういった作品は数多くあれど、セリーほど「パッとしない」少女時代を送ってきた人物(描写)も珍しいのではないか。
そんなセリーが出会う、権力や暴力に対して全力で抗う女性たち。パートナーに手をあげられれば「ふざけんな!」と反抗し、家を出るのも辞さない。また長所である歌声を武器に男性を魅了し、自由にたくましく振る舞う女性。
彼女たちの姿に触発され、少しずつ自分の殻を破っていくセリー。終盤で掴んだ幸運をきっかけに、彼女に秘められていた才能が花開く。暴力夫の呪縛にも負けず、「自分らしさ」を見出していった。
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ファンテイジア・バリーノを始め、シンガーとして活躍するキャストを多く起用した本作。ミュージカル映画ならではの力強さも、生きづらさを感じる人たちに希望を与えるはずだ。
「どんなことがあっても、私たちは美しい。生きている」
直球のメッセージが、社会に広く行き渡ることを祈りたい。
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プロデューサーには、オリジナル版(1985年製作)の監督を務めたスティーブン・スピルバーグも名を連ねている。こちらはミュージカル映画ではないようで、見比べてみるのも面白いかもしれない。
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