レンタルじゃないTSUTAYAが、企画力で過去最高の結果を出した要因とは?
ふえ〜、これ凄いですね。
コロナ禍で書店経営は軒並み苦しいものだと思っていましたが(実際に大変だと思いますが……)。蔦屋書店の総括によると、新規店舗開店や企画など「攻め」が奏功したということです。
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2020年の状況を総括したニュースリリース内容のサマリーは以下の通り。
・国内書籍・雑誌販売額が1427億円で過去最高
・書店展開のTSUTAYA・蔦屋書店の新規オープン+新規加盟が34店舗増加(海外は含まない)
・書籍・雑誌全体の既存店前年比は110%
・コミックは既存店前年比138%(『鬼滅の刃』を除いても既存店前年比は115.8%)
・えほん・児童書の既存店前年比108%
・「書籍」ジャンルは既存店前年比105%
・TSUTAYA文庫作品は発表作品100作品、累計発行部数300万部を突破(2020年3月時点)
その他にも東野圭吾さんの新作『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』において、TSUTAYA限定版カラーカバーを企画している。
ブックカバーは読む側のインスピレーションを掻き立てられる重要な要素なのは間違いない。編集領域に関する仕事を、小売のTSUTAYAが役割を越境して臨んでいるのは、率直に素晴らしいチャレンジだと言える。
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既存書店のTSUTAYA BOOK NETWORK加盟もミソかもしれない。2020年の場合、他企業と連携して新規店舗出店にこぎつけた事例がフィーチャーされていた。また静岡県を拠点とする書店・谷島屋(1872年創業)がTBN加盟となるなど、新旧の良さを掛け合わせた店舗展開が実現している。
僕も、好きだった書店がいつの間にかTSUTAYA BOOKSTOREに変わっていたことがある。そのときの衝撃は大きく、書店のカラーが失われてしまうのでは?と不安もあったが、概ね書店の特徴は引き継がれたまま今に至っている(とは言え、次第に洋書やデザイン書などの分量は小さくなっていった)。地域性や既存顧客の好みをベースに、店舗作りを行なおうという意図だろう。
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同じようなタイミングで、以下のニュースも報じられた。
かつて僕もTSUTAYAに熱心に通い、CDをせっせとデータ移行して個人使用していたことがある。それが今では、TSUTAYAに行くのは年間で1回あるかないか。NetflixやAmazon Primeで配信されていない映画をレンタルするのみで、そのたびに返却する煩わしさに嘆息してしまう。
時代は変わった。
「レンタル」という旧形態のビジネスモデルを続けているTSUTAYAそのものが終わったというのは早計で。上記のように新しい企画を生み続ければ、結果も出せるという好例だと評価できる。
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こういった成功事例を「資金力のあるTSUTAYAだからできるのでは?」と言って済ませるのはもったいない。
例えば青山ブックセンターは、コロナ禍で売上が減少する中でも、出版やオンライン販売、コミュニティアンバサダー制度などを積極的に行なっている。
コロナ禍で店舗に行く機会も限られている中で、顧客との接点を持つことが容易でなくなっている時代だ。
SNSも単に情報を発信するだけのチャネルの1つとして見なすのは間違っていて。自分たちと繋がる / 接点を持つ / 時間を共有するためのコミュニケーション手段として考えるべきだ。コミュニケーションの方法は無限にあるわけで。その中から順繰りに適切な施策をやってみる。購買と無縁のことだったとしても良いではないか。というように僕は思える。
いずれにせよ、1つ1つの積み重ねは、経営者、社員、スタッフの頑張りに他ならない。それはきっと、地味で地道なもので、やっている側は相当にしんどいものだろう。
それでも「昨日より今日、今日より明日」と、着実に未来に歩を進める取り組みを、僕のnoteでもしっかりと紹介していきたい。(よければ、ほぼ日で更新している無料マガジンのフォローをお願いします)