![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60007518/rectangle_large_type_2_0dafd81539e7abe13e242666d7a980cd.png?width=1200)
松坂桃李に嫉妬した日曜日(映画「孤狼の血」「あの頃。」を観て)
「好きな俳優を挙げよ」
という問いであれば、誰しも様々な答えを挙げることができる。
一方で「ここ数年、最も作品に恵まれている俳優は?」と問われたらどうだろう?おそらく松坂桃李さんの名前が筆頭で挙げられるはずだ。
日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を授賞した「新聞記者」、最優秀助演男優賞を授賞した「孤狼の血」。他にも話題作、衝撃作、意欲作と銘打たれる数々の作品に出演している。Wikipediaで作品を確認すると、その仕事量だけで圧巻なのだけど、それ以上に素晴らしい作品に名を連ねることができるのは役者冥利に尽きるだろう。
*
「孤狼の血」は新米刑事役。名門大学出身で、大学名で呼ばれる半人前扱い。役所広司さん演じる「ガミさん」に振り回されながら、影響を受け、あわや被疑者を殺めてしまいそうなほどの狂気に至る。「日本のいちばん長い日」でも、頼りない一兵卒が、最終的には何を考えているか分からない狂人に変わったが、最終的に纏う色気は、他の俳優とは全く違う哀愁も伴っている。
「あの頃。」は大学生で、松浦亜弥さんを追いかけるオタク役。まあ何を演じさせようと顔面は松坂桃李さんなわけだけど、「孤狼の血」「日本のいちばん長い日」で見られた色気は全くなくて。ダセえなあと思いながら、どこか感情移入できるような、憎めない青年で、青春群像劇を取りまとめるのだから面白い。
*
現在、劇場公開されている「孤狼の血 LEVEL2」は観る予定はないけれど(いわゆるヤクザ映画は苦手なので……)、古田新太さんと共演する「空白」は非常に面白そう。
古田新太さんが松坂桃李さんを追い詰めるという設定で、モンスター化していく様も注目なのだが、対比として描かれる「凡人」としての松坂桃李さんもやっぱり気になってしまう。(おそらく「凡人」という設定では終わらないだろうが)
凡人、狂人、変人、才人、ヒーローなど、あらゆるキャラクターを演じられる松坂桃李さんに、無性に嫉妬する週末だった。
なんで今更、嫉妬という感情が生まれたのだろう。(俳優やタレントに対して「嫉妬」という感情を抱いたことは一度もない)
*
脳科学者の中野信子さんは嫉妬に対して、こんなことを言っている。
嫉妬と妬みって実は違う感情なんです。妬みは、自分よりも成功した人とか、自分よりも上の何かを持っている人に対して、下から「引きずり下ろしてやりたい」という感情なんですけど、嫉妬は、自分の地位が誰かに脅かされるんじゃないか、自分の妻を誰かが奪いにやって来るんじゃないか、自分の夫を若い女がかすめ取ろうとするんじゃないか……そういう誰かに先手を打って亡き者にしてやろう、という感情なんです。
(ヤマザキマリ・中野信子『パンデミックの文明論』P116〜117より引用、太字は私)
僕の持っているささやかな幸福(あるいは、幸福だと信じ込んでいる前提)を、松坂桃李さん演じる何者かが揺るがせに来るのかもしれない。
松坂桃李さん演じる「凡人」は、最初は自分と近い立場にいて。その「凡人」が、物語が進むにつれて、ちょっとずつ観る者の感情を震わせていく。なるほどそれは、確かに脅威と言えなくもない。
だから、松坂桃李さんの作品を観るのは、ちょっとした「対決」なのかもしれない。価値観を、幸福感を揺るがされるかもしれないという。
これからの作品も、楽しみでならない。
いいなと思ったら応援しよう!
![堀聡太](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71737329/profile_e7f6c6b680929c4adf326adce50729d5.jpg?width=600&crop=1:1,smart)