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胆力と金、そして礼節。配信作品「カジノ」が魅せる時代遅れの価値観を、僕は嘲笑えそうにない。

Disney+配信ドラマ「カジノ」、ようやくシーズン2も全話視聴した。

これで完結。すっきりとしたラストシーンとは言い難かったけれど、終盤にかけて登場した新しいキャラクターの不気味さ、新旧「ワル」たちの金への執念は凄まじく、それだけで見続けた甲斐があったように思う。

シーズン2では、時事ネタに近いことも。

ドゥテルテを思わせるフィリピンの新しい大統領。ビットコインなど仮想通貨をめぐる投機熱。いずれも社会を騒がせ、2010年代後半を語るに欠かせない出来事である。

もともとチャ・ムスクは「新しいビジネス」としてのカジノを展開し、フィリピン内で幅を利かせた人物だが、犯罪に手を染めたことによって徐々に追い詰められいく。半沢直樹とは逆、ラスト2話では、警察からも仲間からも新手の敵からも、示し合わせたかのように災難がやってくる。

憎めないのは、チャ・ムスクが基本的に「人を信じる」を生命線としてやってきたことだ。

カジノはある意味お客さんを騙すビジネスだが、師弟関係を結んだ仲間のことは、どんなにヘマをしても信じようとする。困難に陥ったら助けようとする。(その結果、何度も尻拭いに追われるのだが、チャ・ムスクはその都度めげなかった)

ある意味で、不器用な人間だったのだろう。

胆力と金、そして礼節を重んじるチャ・ムスク。新時代の功利主義、新自由主義とは相性が合わなくて当然ともいえる。

その転落の様が、どこか憎めないのは、チェ・ミンスクがまとうチャーミングな魅力だろう。

チェ・ミンスクとソン・ソック。このふたりを画面で同時に観られることは、今後ないかもしれない。不器用なふたりの胆力のぶつかり合い、古き良き時代のバチバチを体感できる配信作品だ。

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ほりそう / 堀 聡太
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