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『社会は どう進化するのか』を読む ①

「新自由主義」から「共生」の時代へ

先日、過疎問題を取り扱う本を読んでいたら「地域コミュニティ」に関する記事の中で書かれていました。

これまでの「大勢の中で揉まれながら(自由競争)勝ち抜く」と云う考えは、実は皆を不幸にしていく。
競争原理を否定する訳ではないが、グループ同士がお互いに協力し合い、補完し合うほうが、全体として安定して実りの多い状態を実現できるでしょう。

ニワトリを使った実験を例に「勝ち組だけを選抜して種の保存を試みても実りは少ない。むしろ、強いモノと弱いモノを共存させ、協力・補完し合うほうが安定して実り多い状態が実現できる。」と書いてありました。


また、関連情報をgoogleしいたら「ミツバチの社会性」に関する論文(J-Stage)にアタッりました。

注記に書いてあった この本を実際に読みたくなった。

『社会はどう進化するのか』
David Sloan Wilsonom
高橋洋 訳
亜紀書房 (2020.01.29)

【ブックレビュー】

https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=936

はじめに

この本の著者 David Sloan Wilson は、従来の個体間の競争のみに焦点を当てた進化論ではなく、グループや生態系としての複合的な進化論の重要性を説いています。

第4章 pp.105〜127.

善の問題:調和と秩序

ニワトリの産卵率 pp.117〜121.

ニワトリの産卵率の高い「勝ち組」だけを選抜して種の保存を試みても実りは少ない。
つまり、後続世代の産卵率は次第に落ちていったのです。
攻撃性の高いニワトリが選抜されることで、次第にお互いの攻撃によるストレスから、産卵率が低くなる

道徳性とは pp.121〜127.

ミツバチの巣は協調と勤勉の象徴としてエンブレム等に長く用いられてきた。p.125

【参考】J-Stage

「社会」を単位に生きるミツバチ

2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0701

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajg/2014s/0/2014s_100299/_article/-char/ja/

最後に抄録を記載しました。

第6章 pp.152〜198.

グループが繁栄するための条件

1) 強いグループアイデンティティと目的の理解
2) 利益とコストの比例的公正
3) 公正な意思決定
4) 合意された行動
5) 初めは友好的な注意から段階的制裁へ
6) もめごとの迅速で公正な解決
7) 自立性
8) ガバナンス(統治制度)

【以下 ②へ 続く】

第7章 pp.199〜234

グループから個人へ

第8章 pp.235〜270.

グループから多細胞社会へ

第9章 pp.271〜296.

変化への適応

第10章 pp.297.〜317.

『社会は どう進化するのか』を読む ②

未来へ向けての進化

【抄録】J-Stage
「社会」を単位に生きるミツバチ
2014年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S0701

ミツバチは,数千から最大6万匹ほどの社会集団を形成するが,社会性昆虫を扱う分野では,この社会単位を「コロニー」という.
コロニーは1匹の女王蜂と,繁殖期には全体の10%ほどの雄蜂,そして残りはすべて働き蜂で構成される.
コロニーの営みは,さながら多数の細胞で構成される動物一個体の営みに似ており,このため「超個体」とも呼ばれる.
ちなみに,マルハナバチやスズメバチとはちがい,年間を通じて単独になるフェーズを持たないので,現存のミツバチは,およそ500万年前からコロニーという単位を崩したことがないことになる.
コロニーの大部分を占める働き蜂は,女王蜂と同じ雌で,いずれも受精卵から生まれる(ミツバチの性決定においては,受精卵が雌,未受精卵が雄となる).
働き蜂の母親に当たる女王蜂は,2~3年の一生の始めに10~16匹程度の雄蜂と交尾して精子を得て,これを体内に蓄えて,その後,一生の間,働き蜂や自分の後継となる女王蜂になる受精卵を産むたびに少量ずつこの精子を使い続ける.
女王蜂の寿命は,通常2~3年であるが,実際には精子を使い切れば寿命となる.
冬期には,コロニーとしての活動レベルも下がるので,6か月程度まで働き蜂の寿命は延長するが,年間の大半では短く,これを女王蜂が一日に産む1000個ほどにもなる卵によって補っている.
つまり,ミツバチのコロニーは新陳代謝の高い状態を維持して檻,働き蜂を次々と更新して,若返りを図っている.
働き蜂が3万匹ほどのコロニーでは,一日に1000匹死んで1000匹生まれることでコロニーの状態は安定的に維持できる.
女王蜂が,巣の外で多数の雄蜂と交尾をすることで,生まれてくる働き蜂は,異父姉妹の集合となる.
その結果,働き蜂はコロニーの中での遺伝的多様性を確保し,これが,外界の刺激に対して,一律に動くのを回避して,刺激の種類や程度に応じた最適な調節を実現している.
一般的には血縁選択,つまりは母娘や姉妹の協力関係が社会進化の推進力とされるが,完成されたミツバチの社会は,血縁よりは遺伝的多様度に基づく,コロニー活動のための多機能性を優先している.遺伝的多様度を働き蜂の横軸方向の広がりとすると,縦軸方向は,春や秋にはわずか30日ほどしかない個々の働き蜂が持つ時間となる.
ミツバチは日齢に伴う生理変化による分業によって,女王蜂に一任する産卵以外の,育児,食糧の加工と貯蔵,採餌などのすべての活動を分担している.巣の外で,害敵などに遭遇する外勤活動(主として採餌)は,このため一生の最後の分担となっている.
ミツバチのコロニーは,年間で120 kgの花蜜と20 kgの花粉を花に頼る.これを集めるために,ダンス言語を用いるなど,昆虫としては非常に高度に発達した採餌戦略を持つ.
また,ハナバチ類では最も高い定花性を示し,連続的に同じ花を訪れ,これが植物の側から見れば受粉の効率を高める結果となる.大量の資源を植物に頼る代償として,ミツバチは植物の繁殖を助けていることになる.
このような高度な社会が維持できるのは,一方では,個々の働き蜂の高い能力に大いに依存しており,また,私たちからは想像しにくいが,これといった命令系統を当てにしていない社会構造と,外界の資源環境との明確な融合によっている.
本シンポジウムのテーマは「飼育」である.ミツバチは,確かに法的には家畜に分類されているが,コロニーとして高度に自立していて,同時に資源環境とは切り離せない生物であり,実は字義通りの「飼育」は困難を極める.
人間の作業としての飼育は,実際には,人間が与えるストレスを,飼育に伴う保護で補っている状態を指す.
その点で,生産養蜂など,ミツバチとの共存的な関係を維持するためには,私たちもミツバチが利用する環境を考えることから始めなければならないのかも知れない.

① 2021.04.24
② 2021.04.25

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