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『4匹の蝿』映画感想文・今見ても斬新で怖い作品


見てから時間が経ってしまい、記憶が怪しくなってきました。


今回の『ダリオ・アルジェント動物3部作』の中では二番目に面白かった作品です。


異常な戦慄!

あらすじ

ロックバンドの若きドラマー、ロベルトは、執ように自分をつけ回す、黒い帽子の正体不明の男に悩まされていた。そしてある夜、限界に達したロベルトは男に詰め寄る。2人は激しい口論になり、その勢いでロベルトは誤って男を刺し殺してしまう。その瞬間、不気味な仮面の男に現場の写真を撮られてしまい、その事件をきっかけにロベルトの周囲で不可解な殺人事件が起こり始める。 1973年製作/104分/PG12/イタリア原題または英題:Quattro Mosche Di Velluto GrigIo配給:キングレコード、Cinemago劇場公開日:1973年4月21日

感想(ネタバレ含む)

ダリオ・アルジェントの長編第3作。2作目の『わたしは目撃者』は少し平凡な印象(と言っても平均以上に面白かった)でしたが、今作は払拭された感じがしました。


主人公ロベルトをつけまわる男や、劇場でのもみ合いを目撃する人形の不気味さで、冒頭からガッチリ心をつかまれます。


色々とこみ入った話で、一体どうなるのか、どこに蝿が出てくるのか、終盤まで分かりませんでした。


ロベルトのバンドのメンバーを蝿に例えているのかなと途中まで思っていたくらいです。


まさか、被害者の網膜に焼き付いた映像とは…驚きの展開でした。


ロベルトの妻ニーナの揺れるペンダントであったと分かった時の、ゾッとする感覚はアルジェント作品ならではです。


憎む父親と似ている男性ロベルトとあえて結婚し、別人である夫に復讐する、という意外な心理も面白いですし、ニーナの最後の派手な落命の仕方は素晴らしいと思いました。


ロベルトってもちろん悪人ではないのですが、なんとなく人をイラッとする人物造形で、追い込まれれば追い込まれるほど楽しい気持ちになってくるという、私自身の残酷さにも気づきました(笑)


たいして売れていないバンドマンだけどお金に困っていないとか、どこか自分勝手に見えるところとか、単に顔つきとか、絶妙に気に食わない、いいキャラクターでした。


ロベルトとニーナ、形ばかりで心が通い合っていない夫婦のモデルとなったのはダリオ・アルジェントの私生活という話もあります。


主人公たちがアルジェント夫婦に似ていることもあり、当時の奥様がこの作品でのニーナの扱われ方にひどく憤慨し、その後夫婦仲は破綻したそうです。


自分たちのことを、恐怖、復讐、惨劇にイメージを膨らませて作品に仕上げてしまう心理…アルジェント恐るべしです。


時折挟まれるロベルトの悪夢、自分が斬首刑となる場面ですが、まさに!というところでいつも目が覚めます。


妻ニーナからの復讐が進行し、夢とリンクしていたと思われますが、結局最後に首を落とされたのは妻ニーナだったというどんでん返しがとても印象的でした。


アルジェントの本を読むと、斬首刑の場面もラストの事故の場面も、とても苦労して撮影したようです。


ホラー・サスペンスに賭ける情熱が存分に発揮された作品だと思いました。


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