「ディープな維新史」シリーズⅥ 禁断の脱隊兵騒動《今なおタブーの「脱隊兵騒動」》 歴史ノンフィクション作家 堀雅昭
《今なおタブーの「脱隊兵騒動」》
戊辰戦争終結後の明治2年末から同3年初頭にかけて起きた脱隊兵騒動は山口県では明治維新史のタブーである。一坂太郎氏が『司馬遼太郎が描かなかった幕末』で、「私も以前山口県の県外向け広報紙に奇兵隊の始末を書いたところ、〈脱隊騒動〉の部分は無惨にもカットされてしまい、憤りを通り越して呆れたことがある」と語っている。
長州藩は明治維新を推進し、近代日本を築いたが、同時に後始末がいささかずさんで、公平な歴史観を育てないまま現代に至った。
実は、彼ら脱隊兵たちは、最後まで「攘夷」を叫んでいたようである(山口県文書館蔵『脱隊暴動一件記事材料』)。
Ⅵでは、そんな禁断の〈脱隊兵騒動〉にスポットを当て、忘れられた近代史を解き明かしたい。